現代のクリエイターとは、「自らのプレゼンスを高めるために、SNSに渦巻く人びとのアテンション(注目)を集める人間」だ。かれらは個人にも企業にも持続的な影響を与え、インターネットを活用して自らの経済圏を拡大する、「クリエイターエコノミー」と呼ばれるメガトレンドを生み出している。
2022年8月に発表されたAdobeのレポート「Future of Creativity」では、クリエイターエコノミーの規模はこの2年で倍増し、既に全世界で3億人を超えるクリエイターが活躍しているという。クリエイターは、誰かに使われるのではなく、自分自身で経済活動を行い、経済を牽引するようになっているのだ。
クリエイターエコノミーを駆動させる動画は、コロナショックを境に著者の言う「動画2.0」から「動画3.0」へとシフトチェンジした。著者はこれについて10の変化を挙げているが、1つ紹介すると、動画でコンバージョン(成果、購入など)を測れるようになったことがある。
これまでのマーケティングでは、まず認知、興味・関心、比較・検討という段階を経て購入に至るのが定石で、それらのファネルを順番にクリアする必要があった。しかし、「TikTok売れ」という言葉に代表されるように、従来の動画広告の土俵であった「認知」と「比較・検討」をすっ飛ばし、ユーザーが動画視聴からすぐに購入に至る現象が起きている。
それをTikTokが成し遂げたのは、「誰が発信元なのかはわからないけれど、みんながそれをやっている、買っているという現象」=「シミュラークル(真似して楽しむ)」を生み出したからだ。こうして、動画をブランディングの位置付けから、直接購買をもたらすセールスプロモーションへと変化させていった。
クリエイターエコノミー時代におけるビジネスの新・四大要素は、ヒト・モノ・カネと、SNSが生み落とした「アテンション」だ。「インスタ映え」「TikTok売れ」という言葉は、アテンションがもたらす原因と結果を示している。
デジタル広告含めこれまでのマーケティングでは「リーチ(広告を見たユーザー数)」を軸に価格が決められてきた。しかし、デジタルが持っている本質的な価値は、「人の心に深く入り込み、行動へと促す作用」である。アテンションは、リーチのようにお金をかけなくても、「現象」を作ることができる。
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