仕事をしている人にとって、がまんは日常だ。
課長であるあなたは、部長から突然、明日の朝までの仕事を頼まれたとする。その仕事を担当したのは部下のAさんで、Aさんに頼めば、おそらく2時間程度で仕上げてくれるだろう。だが本人に声をかけてみると「今日は予定があるので、残業はできません」と言われてしまった。こうした場合、多くの課長は「自分でやる」という対応になるだろう。本当は手伝ってほしいけど、部下に無理強いはできない。がまんして自分でやろう……と、自分の本音にフタをしてしまう。
もちろん、会社のために一生懸命働くのはいいことだ。ただ、本音を言わずがまんしながら引き受けるのと、「手伝ってほしい」という気持ちを伝えた上で引き受けるのとでは、心理的な負担が大きく違う。
自分もがまんせず、相手にもがまんさせないためにはどうすればいいのかを考えながら、自分の思っていることを言ってみる。これが本書のテーマであるアサーション、お互いを大切にするコミュニケーションの基本だ。
本当は引き受けたくないけれど、断りにくいし、もめるのは嫌だし、生意気だと思われたくないから「思い」を抑えてがまんする。このようながまんや抑圧は、それと気づいている分、まだましかもしれない。
問題なのは、無意識のがまんだ。積極的にやりたいわけではないが、やってやれないこともないから……。こういうスタンスで仕事を引き受けてしまう人は、実は無意識のうちにストレスをためてしまっている。
がまんしていることに気づかなくなると、うつになったり、暴力的になったりするおそれがある。自分の行動をコントロールできなくなる前に、がまんに気づき、自分の本当の「思い」に意識を向けよう。そのための心強い味方として、アサーションがあることを覚えておいてほしい。
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