充実した人生を送るために必要なものは、「知識」である。本書では、心理学者・臨床心理士である著者が、心の働きに関する知識と知恵、そして実践的なテクニックを紹介する。本書は、感情をコントロールし、メンタルヘルスに役立つ方法を身につけるための「道具箱(ツールボックス)」である。
メンタルヘルスの向上は、健康を促進することと同じである。健康な人が日頃からバランスの良い食事をとって体を鍛えているように、たとえ今悩みがなくとも、本書のスキルを試してほしい。うまくいっているときからレジリエンスを構築し、心の健康を育む方法を身につけておけば、困難に直面してもうまく乗り越えていくことができるはずだ。
誰にでも気分が落ち込む日がある。臨床心理士として長年働いた著者が言えることは「人は気分が落ち込んでいることを、誰にも言わない」ということだ。落ち込みに苦しみながらそれを隠し、周囲の期待に応えようとする。そして、「自分はどこかおかしいのではないか」と考え、性格や脳の欠陥のせいにしようとする。しかし、実際はそうではない。気分は、内外のさまざまな影響によって浮き沈みするのである。
気分が落ち込む原因は脳だけではなく、睡眠不足や脱水といった体の状態、人間関係、ライフスタイルなどが複合的に絡んでいる。また感情は、思考・体の状態・行動と影響しあっている。疲れて気分も落ちているから運動する気になれず、じっとしていたらエネルギー不足になり、より気分が落ち込む……という具合だ。
しかし、相互に影響しあっているからこそ、行動や思考を変えれば感情を上向きにすることも可能なのである。
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