社会と国家は別ものであり、異なる起源を持つ。社会は必要に応じて生み出されるが、国家は悪を罰するために生み出される。社会は私たちの幸福を促進するが、国家は私たちの悪を抑制することで幸福を促進する。
人間は自由な状態に置かれたら、まず周りの人と交わろうとする。人間が社会を形成しようとする動機は限りなくあり、一人の力では叶わぬことも、他人の力を借りればできることもある。こうして移民たちは、互いが引き寄せられるように社会を形成してきたのである。
一方、国家統治の目的は「安全」であり、人間の道徳心が欠如しているから必要とされる制度である。イギリスの政体は崇高であるとよく誉められるが、ひどく複雑であるゆえに混乱が起きやすく、同時に不完全でもある。
イギリスの政体には専制政治と共和制が混在しており、3つの要素(王、貴族院、庶民院)で構成される。これら3つの権力は互いに抑制し合っているが、実は大きな矛盾をはらんでいる。まず、庶民院である下院は、王の専制を監視する役目を持っているが、君主制には専制という潜在的な欲望があることだ。また、庶民院は王が国庫を歳出することに対して拒否権を持つ一方で、王は庶民院が提出する法案を拒否する力を持っている。さらに、王は情報を入手する手段が制限されているにも関わらず、大事な最終判断は王に委ねられている。
王は市民に土地や年金を与えることで強大な権力を保っており、そのため議会も王の意志に従わざるを得ない。このような体制が平和的に運営されているのはイギリスの国民性によるところが大きく、政府構造の是非を公正に評価することはできない。
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