イオルコス王ペリアスの宴に急ぐイアソンは、川を徒歩で渡ったとき、途中で足を泥にとられ、サンダルの片方をなくしてしまった。ペリアスは、サンダルを片方だけ履いた者に滅ぼされるというアポロンの神託を事前に受けていたが、まさにその姿で現れたイアソンを亡き者にするため、危険な航海へ旅立つように命じた。それは、黒海の東の果て、コルキスにある金羊皮を持ち帰るという、極めて困難な命令だった。
旅立ちにあたってイアソンは数多の勇士を集め、アテナの指示によって造られた船、アルゴ船に乗せた。竪琴と歌の名手、吟遊詩人オルペウス。勇士が集まっていると聞きつけ駆けつけたヘラクレス。予言の術に長けたモプソスとイドモン。剛力のイダスと、地の底まで見通す眼力を持つリュンケウス。海の上を走れるほど俊足のエウペモス。戦いで窮地に陥った時、望んだものに姿を変えられる能力をポセイドンから授かったペリクリュメノス。年少ながらヘラクレスに次ぐ力を潜在的に持つメレアグロス。ペリアス王の息子アカストスは、王の意に背いて馳せ参じた。他にも大勢の勇士がイアソンの冒険を助けるために船に乗り込んだ。
集まった一同に対し、イアソンが一番優れた者を指揮者にするよう提案すると、皆はいっせいにヘラクレスのほうを見た。しかし、ヘラクレスは指揮者になることを固辞し、招集者であるイアソンが指揮をとるように提案すると、みなはそれに従い、イアソンは喜んで受け入れた。一行は、多くの民衆に見守られながら、航海へ旅立った。
船は、レムノス島に着いた。島の女たちは、前年の自らの大罪により男たちを殺してしまっていた。男たちは、掠奪してきた囚われの女ばかりを愛し、妻たちを蔑ろにしていた。激しい嫉妬にとらわれた女たちは、愛人もろとも夫たちを殺したのだ。
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