アルゴナウティカ
アルゴナウティカ
アルゴ船物語
アルゴナウティカ
出版社
出版日
1997年08月10日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
5.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

困難な冒険に立ち向かい、数々の試練を乗り越え、激しい戦いを繰り広げながら、時に恋に落ちる。そのような筋立ての物語は現代でも数多く生み出されているが、本書は紀元前から語り継がれ、読み継がれてきた、歴史ある物語である。ヘラクレスやオルペウスといった、よく名前が知られている英雄が集い、歌声で船乗りを誘惑するセイレンや、少年を泉に引きずり込むニンフの逸話まで登場し、二千年以上の間、多くの人々を魅了し続けてきた。

特筆すべきは、強力な魔法を操る魔女として後世に知られるメデイアの恋物語だ。逸話としては、悪女として語られることも多いが、本書に登場するメデイアは、若く、純粋で、心をかき乱す突然の恋に惑わされる少女として描かれており、本作の重要な軸となっている。また、主人公のイアソンが「協調型リーダー」として描かれていることも特徴だ。これらは、ヘレニズム期以前の叙事詩には見られないものである。

古代の人々の人生観や死生観も、本書の記述から垣間見ることができる。現代の私たちは、自分の進む道は自分自身の自由な意志で決め、その行動が招く結果を自分の責任として受け止める。一方で、本書に描かれた古代の英雄たちは、進む道も、行動の結果も、神々の導きや定められた運命として受け入れている。悲しい出来事も、そうして乗り越えられる形にしてきたことは、古代の知恵と言えるだろう。

ライター画像
大賀祐樹

著者

アポロニオス
紀元前3世紀頃プトレマイオス朝のアレクサンドレイアに生まれ、ロドス島で活躍した詩人。

本書の要点

  • 要点
    1
    イアソンは、イオルコスのペリアス王から命じられ、コルキスから金羊皮を持ち帰る航海に旅立つ。船にはヘラクレスやオルペウスといった数多くの勇士たちが集い、数々の困難を乗り越えながら、コルキスへ向かった。
  • 要点
    2
    金羊皮を所有するコルキスのアイエテス王から試練を与えられるが、神の力でイアソンに恋をしたアイエテスの娘メデイアは、苦悩の末、魔法の力でイアソンを助ける。
  • 要点
    3
    帰路もさらなる困難の数々に見舞われたが、勇士たちやメデイアの支えを得て乗り越え、無事に祖国への帰還を果たした。

要約

英雄たちの冒険

アルゴ船の勇士たち
SHansche/gettyimages

イオルコス王ペリアスの宴に急ぐイアソンは、川を徒歩で渡ったとき、途中で足を泥にとられ、サンダルの片方をなくしてしまった。ペリアスは、サンダルを片方だけ履いた者に滅ぼされるというアポロンの神託を事前に受けていたが、まさにその姿で現れたイアソンを亡き者にするため、危険な航海へ旅立つように命じた。それは、黒海の東の果て、コルキスにある金羊皮を持ち帰るという、極めて困難な命令だった。

旅立ちにあたってイアソンは数多の勇士を集め、アテナの指示によって造られた船、アルゴ船に乗せた。竪琴と歌の名手、吟遊詩人オルペウス。勇士が集まっていると聞きつけ駆けつけたヘラクレス。予言の術に長けたモプソスとイドモン。剛力のイダスと、地の底まで見通す眼力を持つリュンケウス。海の上を走れるほど俊足のエウペモス。戦いで窮地に陥った時、望んだものに姿を変えられる能力をポセイドンから授かったペリクリュメノス。年少ながらヘラクレスに次ぐ力を潜在的に持つメレアグロス。ペリアス王の息子アカストスは、王の意に背いて馳せ参じた。他にも大勢の勇士がイアソンの冒険を助けるために船に乗り込んだ。

集まった一同に対し、イアソンが一番優れた者を指揮者にするよう提案すると、皆はいっせいにヘラクレスのほうを見た。しかし、ヘラクレスは指揮者になることを固辞し、招集者であるイアソンが指揮をとるように提案すると、みなはそれに従い、イアソンは喜んで受け入れた。一行は、多くの民衆に見守られながら、航海へ旅立った。

レムノス島の女たち

船は、レムノス島に着いた。島の女たちは、前年の自らの大罪により男たちを殺してしまっていた。男たちは、掠奪してきた囚われの女ばかりを愛し、妻たちを蔑ろにしていた。激しい嫉妬にとらわれた女たちは、愛人もろとも夫たちを殺したのだ。

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要約公開日 2023.05.17
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