エース級の選手ばかりを揃えたスポーツチームが、あっけなく負けることがある。その要因は組織の特性にある。組織は個の集合体であり、個と個が作用し合う「相互作用の束」と見ることができる。相互作用であるチームワークが働かないと、メンバーの力が発揮できない。
著者は、「集団による知的相互作用を促進する働き」がファシリテーションだという。つまり、同じ目的をもつチームの力を最大限に発揮させ、問題を解決し、変革する活動を促すことである。そのプロセスの舵取り役がファシリテーターなのだ。
ファシリテーションの効果は3つある。1つ目は、メンバーの相乗効果により、高い成果を生み出せることである。「三人寄れば文殊の知恵」ということわざがあるように、一人一人の知識や経験に限界があっても、チームとして意見を戦わせることで、思いもつかないアイデアや高い成果が得られる。会議で議論を無難にまとめることがファシリテーションではない。ファシリテーターの舵取りで、想定以上の成果を生み出し、イノベーションを起こすことこそがファシリテーションの真骨頂である。
2つ目の効果は、活動への納得感を高めることで、メンバーの自律性を育み、人と組織を活性化することである。
そして、3つ目の効果は、ファシリテーション(促進)という言葉の通り、成果に達するまでの時間が短縮できることだ。
ファシリテーションには多様なスタイルがあり、組織系、社会系、人間系、複合系の4つの領域に分類できる。中でもビジネスパーソンの関心が高いのは、チームの結束力を高め、組織が抱える問題の解決を目指す組織系ファシリテーションだろう。
3,400冊以上の要約が楽しめる