労働人口の減少、経営戦略の変化、人々の価値観の変化。現在は、経営を取り巻く環境が大きく変化しており、企業は人材マネジメントを再考するよう迫られている。それにより、いくつかの変化とジレンマが起こりつつある。
1つめの変化は、外部労働市場に開かれた人材マネジメントの積極的活用だ。近年、人材獲得の方法として、外部労働市場からの採用が重視されるようになってきた。外部からある程度育成された人材を確保した方が、時間的に大きな節約となる。一方で、それはリスクも伴う。採用した人材が期待通りのパフォーマンスを出してくれるか、長期的にその企業に残ってくれるかといったことだ。今後は、人事部門が外部と内部の効果的なポートフォリオを組む必要がある。
また、日本企業は、賃金や処遇の内部公平性と外部公平性の問題にも直面している。内部公平性とは、賃金などが企業内部の他の従業員と比較して公平なものになっているかの判断である。これに対し、外部公平性とは、外部企業の同様の従業員と比較しての公平性を意味する。労働市場における相場との比較といってもよい。
これまで日本の人事では、内部公平性を保つことで、従業員の納得性とエンゲージメントを保ってきた。だが、他社の賃金や待遇などの情報は、ネットなどを通じて容易に手に入るようになっている。そこで、外部労働市場の相場と比べて公平感を持てるような賃金設定が、人材のリテンションにおいて重要となっているのだ。
2つ目の変化は、企業内での人材多様性の増加である。外部労働市場からの採用が増えると、能力や知識、経験値などの多様性、つまりタスク型の人材多様性が増していく。結果的に、そうした人材の能力開発ニーズに応じて、人材育成はより多様化、個別化していくだろう。
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