最初に、ネット広告とアドテクノロジー(アドテク)の進化について整理しておこう。
ネット広告の発展は表示デバイスの進歩と深く関わり合っている。PC、フィーチャーフォン、スマホへとデバイスが進歩するにつれ、テクノロジーが高度化、複雑化してきた。
2000年代からはリスティング(検索連動型)広告やコンテンツマッチ(コンテンツ連動型)広告、ターゲティング広告、ソーシャル広告が主流となり、「枠から人へ」の流れが鮮明となった。2010年頃になるとメディアやアドネットワークの持つ広告枠を入札で買う「アドエクスチェンジ」という手法が広がってくる。
そして、リアルタイムの入札でターゲットや予算を変更し、クリックやインプレッションに応じて課金する「運用型広告」も誕生した。運用型広告はターゲットに対してピンポイントで広告を配信できるためムダが少なく、効果が大きいというメリットがある。さらに広告の効果を可視化できるのも強みの一つだ。可視化した結果に応じてクリエイティブを細かくチューニングすることも可能になるのだ。
そのように変遷してきたネット広告市場は現在、大手プラットフォーマーの寡占状態にあると言える。検索連動型広告のシェアの7~8割を占めているのは、Googleである。GAFAによるプラットフォームは広告市場そのものであり、代理店だけでなくクライアントですらGAFA側のルールに従わざるを得ないような現状だ。
欧米ではこの状況が独占禁止法に抵触するとしてGoogleなどを提訴する動きがあった。日本国内でも巨大プラットフォーム事業者が規制対象となっている。
近年のネット広告で無視できないのが「コンバージョン(CV)」である。ウェブマーケティング界隈ではユーザーが狙い通りのアクションを起こせるかどうかの「成果」に当たる。
例えば、ユーザーが商品購入や会員申込などのアクションを行うとその形跡が残る。それら具体的な成果(コンバージョン)が、表示回数やクリック数といった従来の指標よりも重視されるように変わってきた。
そのような成果を可視化できるのがネット広告最大の強みである。逆に言えば、テレビや雑誌などのレガシーメディアでは、成果を可視化しにくいことが弱点として認識されるようになった。
テレビの視聴者数や視聴時間は、インターネットの利用と反比例するかのように減少してきた。広告業界でもそれらの影響は顕著だ。電通が毎年発表している「日本の広告費」によると、2019年は「ネット広告」が「テレビメディア」を抜いたのが話題になった。
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