著者が社長に就任した1989年当時、武蔵野は赤字続きだった。
しかし現在は違う。リーマン・ショックや東日本大震災、新型コロナウイルス感染症の蔓延などといった危機に見舞われながら、2007年以降、経常利益で赤字になったことは一度もない。2022年8月には、コロナ収束前にもかかわらず、売上は過去最高を4900万円更新、粗利益は過去最高を5000万円更新した。まさにV字回復である。
武蔵野が大きく変わったのは、「お客様第一主義」「環境整備」「経営計画書」という3本の大きな「柱」を建て、全社員がその柱を磨きあげてきたからだ。その結果、社長と社員の価値観が揃い、「変化にすばやく対応できる組織」「社員もモチベーションが高く維持されている組織」として成長し続けられるようになった。
経営は「環境適応業」だ。昨日までの正解が通用しなくなったのであれば、すぐに方針とやり方を変えなければならない。
たとえば2014年までの武蔵野は、「5年以上勤めた社員が『辞める』と言ってきたら、引き止めない」のがルールだった。ところが現在は正反対で、全力で引き止めることにしている。
ルールを変えた理由は、2015年を境にして、生まれてくる人の数と亡くなる人の数が逆転したからだ。その結果、採用に関しても「社員が辞めても、すぐに代わりの人材を補充できる時代」から「社員が辞めると、代わりの人材が見つからない時代」になった。武蔵野は、時代の変化に合わせてルールをつくりかえたのだ。
世の中の変化に応じてルールとアクションを変え、「結果が出ること」のみを実行する――。これが武蔵野のやり方だ。一方、赤字企業の社長の多くは「一度つくった方針・ルール・計画は変えてはいけない」と信じている。
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