未来を想像することの意義は大きい。例えば、アメリカが人類初の月面着陸を成功させたのは1969年だ。アポロ計画が発表された1961年時点では人を月に送るための技術は存在していなかった。
だが、ケネディ大統領が月に行くという大上段の計画を発表したことにより、そのために必要なことやそれを阻む障害が明確になったのだ。長期的なビジョンは中期的な課題を見えやすくし、さらに短期的な課題を次々と浮かび上がらせる。
物事を成し遂げる際に問題となるのは、壁の高さや数ではなく、壁が見えるかどうかにかかっているのだ。
未来を語るうえでキーワードになるのがイノベーション(技術革新)という概念だろう。
イノベーションとは「新しいもの同士を融合させる発想」である。例えば、現代人の生活を大きく変えたiPhoneは、音楽と電話、インターネットをかけ合わせることによって誕生したイノベーションだ。アマゾンもオンライン上で書店のように本を売ろうという発想から生まれ、イーロン・マスクのテスラもモーターと電池を組み合わせることで作られている。
楽天グループのビジネスも、楽天会員のデータベースを中心に、さまざまな事業を組み合わせたエコシステムが展開されている。
日本はイノベーションよりもインベンション(発明)を数多く生み出してきた国だ。DVDや光ファイバーが好例だが、反対に技術を結合させてイノベーションを生む力は乏しい。
今後は成長をけん引する優秀な人材を国内外から集め、同時に規制緩和をしてイノベーションが起きやすい環境を整えなくてはならない。
そして、イノベーションを実行に移す「アントレプレナー」の存在も欠かせない。もともとフランス語で「仲介する者」という意味を持つアントレプレナーは、これまでにない発想で新たなサービスを生み出し世界を変えていく。
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