街中でコーヒーが飲みたくなったとき、目の前にスターバックスと「スターバックスのようなコーヒーショップ」が並んでいたとしよう。あなたはどちらのドアに向かうだろうか?
スターバックスを選んだ人にその理由を聞いてみると、コーヒーがおいしいから、メニューが多彩だから、カスタマイズに対応してくれるから……と、さまざまな答えが返ってくるはずだ。これらの理由はすべて、スターバックスのミッションに起因している。
スターバックスが多くのファンを抱えているのは、スターバックスのミッション「人々の心を豊かで活力あるものにするために――ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」が、お店のパートナー(スタッフ)の間に浸透しているからだ。パートナーたちが同じミッションを共有して行動しているからこそ、「スターバックスらしさ」(=ブランド)がつくられていく。ブランドはミッションから生まれるものなのだ。
パートナーたちの接客がマニュアル通り完璧で、インテリアがおしゃれで、スターバックスに似た看板を掲げておけば、コーヒーの味は“そこそこ”でもかまわない――。そう誤解する人もいるかもしれない。
だが、これではうまくいかない。パートナーたちは、おいしいコーヒーを提供してお客様に喜んでもらうことで充実感を得ている。コーヒーがおいしいからこそ、パートナーたちはお客様に笑顔で接することができ、その結果、店内によい雰囲気が満ちるのだ。
さて皆さんは、自分たちが提供する商品やサービスを心から誇りに思い、お客様に自信をもっておすすめできているだろうか。
「スターバックス」と「スターバックスに似たコーヒーショップ」がまったく異なるように、「iPhone」と「iPhoneに似たスマートフォン」もまた別物だ。
「iPhoneに似たスマートフォン」は、既にさまざまなメーカーから発売されている。さらに、iPhoneは他のスマートフォンよりも高価だ。それでも多くの人は、iPhoneを選んでしまう。その理由は「一度iPhoneを使うと、他とは比べる気にならないから」。そして「その背景にスティーブ・ジョブズとアップルのさまざまなストーリーが隠されているから」だろう。
著者の経験を振り返ると、初めてiPhoneを使ってみたとき、頭を殴られたような驚きと感動を覚えた。ボタンのない、シンプルで飽きのこないデザインも、アプリでカスタマイズしていくという使い方の先進性も魅力的だ。iPhoneの一つひとつの要素が消費者の期待や想像を超えており、そこに大きな感動が生まれたのだろう。
こうした経験や感動を何度か繰り返すと、消費者の中には、アップルへの良いイメージと尊敬が生まれる。たとえ細かい不都合があったとしても「多少のことは目をつぶって我慢しよう」というくらいの気持ちになるはずだ。こうしてアップルのファンやサポーターが生まれていく。
3,400冊以上の要約が楽しめる