現在はVUCAの時代といわれるが、その本質は、現在と未来のわからなさにある。いま何が起きているのか、この先どうなるのかわからない。そんな中で「厄介な問題」に立ち向かわなければならないというストレスが、感情のわからなさを生み出している。
未来の選択肢が読めず、自分の感情にうまく向き合えない状況で、私たちは多くの矛盾に直面する。この矛盾という現象に着目することで、「厄介な問題」に立ち向かおうとする考え方が、本書で提案する「パラドックス思考」である。
パラドックスは、「矛盾した状態」「逆説」という意味をもち、論理パラドックスと感情パラドックスの2種類に分かれる。論理パラドックスとは、問題の背後に矛盾する主張Aと主張Bが存在しており、どちらかを正しいと仮定すると論理的に正しい答えが出せなくなる状態を意味する。
これに対し、感情パラドックスとは、問題の背後に矛盾する感情Aと感情Bが存在しており、どちらかの感情を優先すると納得のいく答えが出せなくなる状態を指す。
本書が提案するパラドックス思考の特徴は、厳密な正しさを前提にする論理パラドックスではなく、曖昧さを生きる人間社会に特有の感情パラドックスに着目する点だ。ポイントは、厄介な問題に対峙したときに、あらかじめ矛盾する2つの感情を発見することである。人間は時に、自分の考え方や現実の捉え方を捻じ曲げて、矛盾をなかったことにしようとする。この性質は認知的不協和と呼ばれる。認知的不協和は、矛盾による不快感から無意識に自分を防御するための反射のようなものである。「Aしたいけど、実はBもしたい」という欲張りな感情を受容し、それらを両立する解決策を考える。これがパラドックス思考の基本姿勢となる。
パラドックス思考は3つのレベルがある。
レベル1:感情パラドックスを受容して、悩みを緩和する
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