イノベーションとは「経済的な価値をもたらす新しいモノゴト」である。その大切なポイントは、「経済的な価値」と「新しいモノゴト」の2つである。しかし、新しければいいということではない。イノベーションの「新しさ」とは、「新規性」が高いかどうかにあるからだ。
「新規性」は2つに分けられる。まず、ラディカル・イノベーションだ。蒸気機関の登場で生産性が飛躍的に向上したような、「既存のモノゴト」を大きく破壊するイノベーションである。もう1つは、「既存のモノゴト」に革新的な改良を加え、改良が進むにつれて経済的な価値を生み出すインクリメンタル・イノベーションである。両者はトレードオフの関係であり、一石二鳥とはいきにくいが、戦略的に考えることでチャンスの源泉になる可能性がある。
イノベーションには「新しい知識」が必要だ。その理由は、新しい知識やアイデアをビジネスの源泉にすると、大きな経済的価値が生まれやすいからである。
例えば、所得が高い仕事に医師や弁護士などがあるが、彼らの平均所得が大きくなるのは、平均を押し下げる人たちが少ないからである。彼らの稼ぎ方は基本的に労働時間に依拠しており、これを5倍、10倍にしようとするのは容易でない。
一方、知識やアイデアを元にしたビジネスは稼働時間や場所にとらわれにくい。ハリー・ポッターは著者のJ・K・ローリングが寝ている間も世界中で売れているし、新薬は開発チームが食事をしている間も売れ続ける。さらに、多重利用ができることも経済価値を引き寄せやすい。知識やアイデアは多くの人が同時に消費しても、その質に影響を与えないからだ。
とはいえ、新しい知識を生み出すには投資が必要で、それは「サンク・コスト(埋没費用)」になりやすい。研究開発費や広告宣伝費に代表されるサンク・コストは、事業撤退時に取り戻すことができないため、投資を控えようとする企業も少なくない。しかし、サンク・コストは独占的な利益の源泉となり、これを避けていては大きな競争力を築けない。
3,400冊以上の要約が楽しめる