サイゼリヤに対するみなさんのイメージはまず、「とにかく安い」ということではないだろうか。メニュー表を見てみると、ほとんどの商品が299円、399円、499円といった価格なのだから驚きである。イタリアンレストランとしては破格の値段だ。
ここまでの低価格を実現できているのは、徹底した努力があるからだ。さらにサイゼリヤの凄さは、1967年の1号店出店時から40年以上その努力を継続している点にある。
サイゼリヤは幾度となく大幅値下げを実施してきた。千葉県市川市に1号店を開いた創業時は軽食中心だったが、1969年にイタリア料理に方向転換する。当初客足はまばらだったが7割値下げを実施したところ客が殺到。値下げの効果の大きさを痛感した創業者正垣氏は、その後低価格へのこだわりを徹底するようになった。
安さに取組む理由は多くの人に喜びを与えるためであり、「安くておいしいものを出すことが一番の社会貢献」という考え方にある。多くの外食企業はバブルやリーマン・ショックといった社会経済の状態に合わせ、場当たり的に商品価格を変動させているが、サイゼリヤはそうではない。普通の人が日常的に食事をできる価格帯、前菜からデザートまでフルコースを楽しめる価格帯を目標とし、創業時から取り組んできた。だからこそ、「この価格なのにこの品質」を長年維持出来ているのだ。
サイゼリヤの特徴は、低価格なのにおいしいということだ。価格帯から想像するレベルを上回るおいしさがあるのは、毎日食べたい味を追求し、常に素材の質を高める努力をしているからだ。
外食業のおいしさの基準は「脳をびっくりさせる」ところにあるという。そこに求められるのは毎日の食事ではなく誕生日のお祝いなど特別な食事の提供だ。しかしサイゼリヤの正垣氏は、そのおいしさの基準に異を唱えた。「毎日食べても飽きない食事」にこだわり、イタリア本国でなされているように、用途に応じてコーディネートした食べ方でおいしさが倍増するよう工夫している。そんなトラットリア(大衆食堂)を目指すサイゼリヤが目指す味には、高級イタリアンとは違う価値があり、年間のべ1億人以上の客が来店するのも、その価値を多くの人が理解している証拠だ。
そうしたおいしさを実現するにはどうしたらよいか。イタリア料理は素材本来の味を生かす料理だ。提供時の味のムラを無くし高品質の食品提供につなげるには、素材の品質を高めることが最も重要なのだ。そのための仕組みとして「コールド・チェーンシステム」を採用している。これは生産から消費まで冷凍・冷蔵・低温の状態で流通させる方法で、野菜の鮮度が損なわれるのを防ぐ効果がある。米も玄米の状態で管理保持し、炊き方まで徹底調査し品質をコントロールしている。
低価格帯でのおいしさを陰で支えるのは、「人時生産性の高さ」と「バーチカル・マーチャンダイジング」にある。順序からいくと、まず優先されてきたのは
3,400冊以上の要約が楽しめる