グーグルのチーフ・エコノミスト、ハル・バリアン氏の有名な言葉に、「今後10年間、最もセクシー(魅力的)な職業は『データサイエンティスト』である」というものがある。今では、統計・データ分析の担い手は、IT業界やコンサルティング業界で引く手あまたの状況にある。一方で、分析が好きなだけでは成果が上がらない、という事実も分かってきた。求められるのは業界知識を持ち、経営戦略が語れるようなデータ分析のスペシャリストだ。
業務部門の担当や経営層の方が分析の素養を身に付けることを志向して、本書のタイトルには「超分析」という少々大げさな言葉をあえて使っている。本書はビジネスパーソンが理解しやすいように、分析手法とデータ分析の活用事例を基礎的な内容も含めて編集し、現場で使えるデータ分析の教科書となる一冊を目指したものだ。
分析方針を立てるにあたり、まずアウトカム(成果指標)を明確にするべきだ。データ分析を一言で表現すると「比較」である。単一セグメントの分析ではなく、例えば来店頻度の高い顧客と低い顧客の違いを明らかにしていくような作業が該当する。その分析結果を用いて広告出稿プランなどの各種施策を実施、改善していくのだ。
アウトカムという表現は、医学・政策科学の領域でよく使われる。例えば医学研究において、「今回のアウトカムは心疾患の発症率」というように表現される。医学研究で分析方針に迷いが生じにくいのは、このようにアウトカムを明確化する習慣が根付いているからだろう。
ビジネスにおいては、究極的には利益を達成するために売り上げ増かコスト減を図ることが目標となる。そのため、顧客の利用頻度、客単価、設備の故障率などの指標を追いかけていくことになる。このように「ゴールに直結する指標」を強く意識するために、アウトカムという言葉を使うことを勧めたい。
アウトカムが定まったら次に解析単位を考えるべきである。よく分析の切り口という表現がなされ、解析単位を考えることには特別なセンスが求められるように表現されるが、実際は選択肢を頭に入れておくことで誰にでも考えられるものだ。
具体的には、人間(WHO)・物(WHAT)・手段(HOW)・時間(WHEN)・場所(WHERE)という観点を参考に、考えていけば良い。
留意しておくべきは、解析単位は最低でも数十~数百は必要となることだ。例えばたった2店舗の分析では有意な傾向は見つけられない。少なくとも数十店舗のデータを見て全体的な傾向を捉えていくことが求められる。また解析単位は、その特徴が自明のものであってはいけない。例えばTシャツ、スカート、靴、というような商品ジャンルを比較しても、当り前の違いが導き出されるだけで、具体的な施策に落ちにくい。
有意義な解析単位として、
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