“超”分析の教科書

実践! ビジネスに役立つ
未読
“超”分析の教科書
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実践! ビジネスに役立つ
未読
“超”分析の教科書
出版社
日経BP
出版日
2014年12月31日
評点
総合
4.0
明瞭性
3.5
革新性
4.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

2010年代に入り、ますます脚光を浴びている「ビッグデータ分析」。本書は『統計学が最強の学問である』の著者として有名な西内啓氏など、この分野の第一人者の方々によるインタビュー記事や分析手法の解説、企業におけるデータ活用事例などが掲載され、この本だけで最近のトレンドを把握することができる、データ分析の決定版とも言える一冊だ。アウトカム、解析単位、説明変数というような分析の基本用語の解説から重回帰分析やロジスティック回帰分析が有効な分析対象の解説など、とても理解しやすくレイアウトされ、データ分析の初心者でも十分に理解できる内容となっている。

ビッグデータ分析というと、統計学や物理学を学んだ一部の専門家が、高度な数式やアルゴリズムを駆使して行うもの、という印象を持つ方も多いだろう。しかし、本書によれば経営や業務に習熟した人こそビッグデータを前に有意義な分析が行えるのだという。

本書に豊富に掲載された活用事例を見れば、赤字バス路線の再生、新規商品の企画、Web広告の最適化などの直感や経験で行われがちな対象に対して、如何にデータ分析が威力を発揮できるか実感できることだろう。経営戦略のような上流のテーマに加え、マーケティングや在庫削減、日々のオペレーションの最適化など、データの活用範囲は幅広い。企業を支える多くのビジネスパーソンにとって、必須のスキルとなりつつあるデータ分析。本書を精読して、そのコンセプトを理解した上で、実際の経営課題の解決に役立ててみてはいかがだろうか。

ライター画像
大賀康史

著者

本書の要点

  • 要点
    1
    アウトカム(成果指標)を明確にして、人→物→時間→場所という優先順位で解析単位を定め、アウトカムの大小に影響を与える説明変数を導き出すことが、データ分析の基本的なアプローチだ。
  • 要点
    2
    重回帰分析は、金額・来店回数などのアウトカムが数字の大小(量)で示される際に行い、ロジスティック回帰分析は、「自社の商品を買ったことがあるか/ないか」というような0か1かと分けられる質的なアウトカムに用いる。
  • 要点
    3
    営業部門、EC部門、調達/物流部門など、ビッグデータ分析が有効な対象部門は幅広い。経営や業務に理解の深い人こそが、データ分析の基本を理解し、経営課題の解決に活用していくべきだ。

要約

はじめに

Fuse/Thinkstock
データサイエンティストよりセクシーに

グーグルのチーフ・エコノミスト、ハル・バリアン氏の有名な言葉に、「今後10年間、最もセクシー(魅力的)な職業は『データサイエンティスト』である」というものがある。今では、統計・データ分析の担い手は、IT業界やコンサルティング業界で引く手あまたの状況にある。一方で、分析が好きなだけでは成果が上がらない、という事実も分かってきた。求められるのは業界知識を持ち、経営戦略が語れるようなデータ分析のスペシャリストだ。

業務部門の担当や経営層の方が分析の素養を身に付けることを志向して、本書のタイトルには「超分析」という少々大げさな言葉をあえて使っている。本書はビジネスパーソンが理解しやすいように、分析手法とデータ分析の活用事例を基礎的な内容も含めて編集し、現場で使えるデータ分析の教科書となる一冊を目指したものだ。

【必読ポイント!】データ分析とは

アウトカム ~自分たちにとっての望ましさを定義せよ~

分析方針を立てるにあたり、まずアウトカム(成果指標)を明確にするべきだ。データ分析を一言で表現すると「比較」である。単一セグメントの分析ではなく、例えば来店頻度の高い顧客と低い顧客の違いを明らかにしていくような作業が該当する。その分析結果を用いて広告出稿プランなどの各種施策を実施、改善していくのだ。

アウトカムという表現は、医学・政策科学の領域でよく使われる。例えば医学研究において、「今回のアウトカムは心疾患の発症率」というように表現される。医学研究で分析方針に迷いが生じにくいのは、このようにアウトカムを明確化する習慣が根付いているからだろう。

ビジネスにおいては、究極的には利益を達成するために売り上げ増かコスト減を図ることが目標となる。そのため、顧客の利用頻度、客単価、設備の故障率などの指標を追いかけていくことになる。このように「ゴールに直結する指標」を強く意識するために、アウトカムという言葉を使うことを勧めたい。

解析単位 ~決めつけず複数の選択肢から幅広く考えよ~
Ingram Publishing/Thinkstock

アウトカムが定まったら次に解析単位を考えるべきである。よく分析の切り口という表現がなされ、解析単位を考えることには特別なセンスが求められるように表現されるが、実際は選択肢を頭に入れておくことで誰にでも考えられるものだ。

具体的には、人間(WHO)・物(WHAT)・手段(HOW)・時間(WHEN)・場所(WHERE)という観点を参考に、考えていけば良い。

留意しておくべきは、解析単位は最低でも数十~数百は必要となることだ。例えばたった2店舗の分析では有意な傾向は見つけられない。少なくとも数十店舗のデータを見て全体的な傾向を捉えていくことが求められる。また解析単位は、その特徴が自明のものであってはいけない。例えばTシャツ、スカート、靴、というような商品ジャンルを比較しても、当り前の違いが導き出されるだけで、具体的な施策に落ちにくい。

有意義な解析単位として、

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要約公開日 2014.12.24
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