ジョナサン・アイブ

偉大な製品を生み出すアップルの天才デザイナー
未読
ジョナサン・アイブ
ジョナサン・アイブ
偉大な製品を生み出すアップルの天才デザイナー
未読
ジョナサン・アイブ
出版社
出版日
2015年01月09日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

スティーブ・ジョブズ亡き後もアップルが世界を驚かせ続けている背景には、ジョブズの哲学を受け継いだ天才デザイナー、ジョナサン・アイブ(ジョニー)の存在があった。アップルやジョブズに関連する書籍は世の中に多く存在しているが、ジョニー個人に焦点を当て、その生い立ちからアップルでデザイン部門の責任者として発言力を高めていくまでの半生を描いた書籍はこの本が初めてだろう。本書では、なぜアップルではエンジニアよりもオペレーションよりもデザイン部門が大きな影響力を持っているのかが明らかになるとともに、ジョニー率いるデザインチームが果たす大きな役割について語られている。

見どころはやはり、ジョブズの厳しい要求に応え続け、次々とヒット製品を生み出していく場面だろう。素材や製法にこだわり、無数のサンプルを作って、一切の妥協なしに製品を仕上げていく様を見ると、iPhoneやiPadのデザインの素晴らしさを再認識させられる。本書にはジョニーがこれまで手掛けてきたデザイン画や試作品、製品の写真が多数掲載されており、一つ一つのエピソードを読みながらこれらを見ると、まるで美術館で解説を聞きながら作品を鑑賞するかのような楽しさもある。

2015年最初の必読本として、アップル製品のユーザーやデザインに携わる人のみならず、「デザインが持つ力」に興味がある方にはぜひ手に取ってみることをおすすめしたい。

ライター画像
苅田明史

著者

リーアンダー・ケイニー
12年以上アップルを取材し続けるジャーナリストで、主な著作には『スティーブ・ジョブズの流儀』(武田ランダムハウスジャパン)、『The Cult of Mac』(エスアイビー・アクセス)などがある。Wired.comのニュース編集者を経て、現在はCultofMac.comの編集者兼発行人。米国サンフランシスコ在住。

本書の要点

  • 要点
    1
    倒産の危機に直面したアップルを救うべく、復帰したジョブズは製品ラインナップを絞り込み、工業デザインを再建の核に据えることにした。
  • 要点
    2
    ジョニー率いる工業デザイングループは、iMacなどの成功によって社内で発言力を強め、アップルではデザインがエンジニアリングをふたたび支配するようになった。
  • 要点
    3
    ジョブズはiPodの創造こそがアップルの本質だと語っている。アップルの最先端技術、伝説ともいえる使いやすさ、そして見事なデザインがひとつになっているからだ。
  • 要点
    4
    ジョニーはクリエイティブ面におけるジョブズの後継者だ。アップルにとってはジョブズの死よりジョニーが辞めるほうが深刻であるとまで言われている。

要約

ジョナサン・アイブとは

Kevork Djansezian/Getty Images News/Thinkstock
生い立ち、アップルに入社するまで

アップルの天才工業デザイナー、ジョナサン・アイブ(以下、ジョニー)は、1967年に英国で生まれた。銀細工職人でありデザインテクノロジーの教育者でもある父親から受け継いだ才能は、高校時代にはすでに群を抜いており、16歳にしてロンドンの大手デザイン事務所から注目され、卒業後にその会社で働くことを約束する代わりに大学の学費を援助してもらうほどだった。入学したニューカッスル・ポリテクニック(現ノーザンブリア大学)で工業デザインを学んだジョニーは、在学中に多くの賞を総なめにし、インターン先のデザイン事務所では経験豊富なデザイナーを押しのけて中心的な役割を果たしていたという。

アップルに出会ったのも大学時代のことだ。手にした瞬間、それまでに試したどんなマシンよりも使いやすいことに驚いた。総合的なユーザー体験を提供しようとデザイナーがマシンに込めた心配りに感動したのだ。

ジョニーは卒業後に2つのデザイン事務所で活躍したが、営業よりもデザインに注力したいという思いを強めていたことに加え、デザインコンサルタントという部外者としての立場では真のイノベーションを起こすのは難しいとも感じていた。そのとき、ジョニーはアップルの工業デザイングループ(IDg)の責任者であるロバート・ブルーナーから勧誘される。悩んだ末にジョニーがアップルに入社したのは、1992年、27歳のことだった。

アップルの危機とジョブズの帰還

アップルに入社すると、ジョニーは2代目ニュートン・メッセージパッドや20周年記念マッキントッシュのデザインを手がけ、多くの賞を受賞。どちらも本格的に普及することはなかったものの、その高いデザインセンスが賞賛され、社内からも高い評価を獲得した。

ジョニーを勧誘したブルーナーがアップルを去ると、後継者としてジョニーが指名された。まだ29歳と若く、経験不足を問題視する人もいたが、ブルーナーの右腕を務め、仲間から尊敬されていたジョニーは、ブルーナーの推薦もあって、その後釜に座ることになる。

しかし、その後はアップルにとって試練の時が待ち構えていた。1994年の時点ではアップルはIBMに次ぐ世界2位のコンピューターメーカーだったが、1995年にマイクロソフトが発売したウィンドウズ95が市場を席巻。アップルは16億ドルもの損失を出し、市場シェアは10%から3%に落ち込み、株価は暴落した。ジョブズ時代の独裁政治への反動から、トップダウンからボトムアップの企業に変わっていたものの、官僚的でスピードに欠け、製品開発は妥協を強いられ、まとまりのない製品が生まれてしまった。多くの製品はエンジニアリング主導の、新しさのかけらもない退屈なデザインとなり、デザイン部門の仕事の大半は電子基板に皮を被せて化粧を施すことだった。エンジニアリングとデザインがますます敵対的になり、ジョニーはIDgを任されて数カ月もしないうちに辞めようと思い始めていた。

そこに帰ってきたのがスティーブ・ジョブズだ。ジョブズは製品を次々と市場に出す戦略を改め、プロ用と家庭用のノートブックとデスクトップ、4種類だけを売ることにした。何十ものソフトウェア製品を切り捨て、ハードウェア製品のほとんどを廃止し、4200名を超える社員を解雇した。そして、ジョブズは工業デザインをアップル再建の核に据える。

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要約公開日 2015.01.09
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