弁護士ドットコム

困っている人を救う僕たちの挑戦
未読
弁護士ドットコム
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困っている人を救う僕たちの挑戦
未読
弁護士ドットコム
出版社
日経BP
出版日
2015年01月17日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

既に月間訪問者数が約660万人、日本の弁護士の5人に1人となる7000人以上の弁護士が登録するサービスに成長した弁護士ドットコム。2014年12月11日に東証マザーズにも上場。この瞬間だけを切り取れば、優れたコンセプトのウェブサービスの成功という一般的な話のようにも聞こえる。しかし、弁護士ドットコムには2点、通常の会社の起業と大きく異なる特性がある。

1つは弁護士資格を持つ創業者がウェブサービスを立ち上げ、上場させた唯一の例であるということだ。司法試験という難関を突破した弁護士の多くは、特別な待遇が約束される。そのような環境を飛び出してウェブサービスという別の畑とも言える領域で起業をすることは、例外と言えるだろう。もう1つは、弁護士ドットコムが8年間も実質赤字の期間を経て、上場に至ったことである。常識的には考えにくい挑戦と長い苦難の日々を経て、今の成果に至っているのである。

弁護士ドットコムは、初めから現在のサービスの形があったのではなく、順次サービスの改善のために打った施策が当り、現在の形となった。本書にはその成長の過程を疑似体験できるようなストーリーが描かれており、初めて弁護士ドットコムという企業に触れる人にとっても、読みやすい書に仕上がっている。起業に興味がある方やサービス拡大の施策に悩む経営者、ウェブサービスの企画を担う方など、多くの方にとって本書は一読の価値がある。

ライター画像
大賀康史

著者

元榮 太一郎
1975年アメリカイリノイ州生まれ、慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、1999年に司法試験合格。2001年にアンダーソン・毛利・友常法律事務所へ入所し、M&A、ファイナンス、国際取引などの企業法務の業務に携わっていたが、「弁護士をもっと身近にしたい」という思いから2005年に独立。弁護士ドットコム株式会社および弁護士法人法律事務所オーセンスを設立し、現在に至る。テレビ、ラジオへのレギュラー出演や、新聞・雑誌・WEBなど幅広いメディアにて専門家コメンテーターとしても活躍中。座右の銘は「実るほど頭を垂れる稲穂かな」

上阪 徹
1966年、兵庫県生まれ。89年、早稲田大学商学部卒。リクルート・グループなどを経て、94年よりフリーランスに。経営、金融、ベンチャー、就職などをテーマに、雑誌や書籍などで幅広く執筆やインタビューを手がける。著書に『成城石井はなぜ安くないのに選ばれるのか?』(あさ出版)、『僕がグーグルで成長できた理由』(日本経済新聞出版)、『職業、ブックライター。』(講談社)、『成功者3000人の言葉』(飛鳥新社)、『リブセンス』(日経BP)、『六〇〇万人の女性に支持される「クックパッド」というビジネス』(角川SSC新書)など。他の著者の本を取材して書き上げるブックライター作品も60冊以上に。累計40万部のベストセラーになった『プロ論。』など、インタビュー集も多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    元榮氏は父親の転勤でドイツに転居するも生活になじめず、高校で日本での一人暮らしを始め、様々なアルバイトで多くの人に出会い、感性を磨いた。
  • 要点
    2
    司法試験合格後、一度弁護士事務所で働くも、ベンチャー企業に感化され、「弁護士×起業」という道に舵を切る。その後、8年間の実質赤字という状況でもサービスの改善を継続し、黒字化と上場を果たした。
  • 要点
    3
    日本の国民性に鑑みれば、アメリカのような訴訟社会を目指すのではなく、「予防法務」を充実させていくべきである。弁護士が身近ではないことを逆手に取った違法行為の「やり得」な状態を改め、「やり損」へと変えることがその第一歩だ。

要約

幅広い経験が人間をつくる

ディスコのバイトで世間を学ぶ
Mie Ahmt/iStock/Thinkstock

著者の元榮氏は、自身の仕事の考え方について高校・大学時代の「アルバイト」から得られたものが大きいという。父親の転勤で中学の頃からドイツに移り住んだが、そこでの生活を楽しめず、両親を説得して日本での一人暮らしを始めた。服や靴を買うことを楽しみにしていたため、高校で禁止されていたアルバイトをした。

初めは新聞配達で、時給1500円という魅力があったが、実働毎日1時間という短さのため変更した。コンビニエンスストアでのアルバイトを経て、友人に紹介されたレストランでのアルバイトを始めた。大学生になり、色々な世界をのぞくことが後に役に立つとの思いから、六本木のディスコでも働いた。中学卒の暴走族上がりの先輩スタッフや、家出少女の客が来るなど、多様な人に巡り合った。ディスコではまずバーテンとしてカクテルの作り方を覚え、ホール担当を経て、客引きも行った。客引きでは競合店とのプレゼン競争となる。競合との差を訴え、心に残るような言葉を選び、笑顔で接する。大学では学べない、実学がそこにあった。弁護士になってからも、国選の当番刑事弁護を担当し、勤務先で行うビジネス法務とは離れ、広い世界に触れることを続けていた。

待っていた「三軍」という現実

弁護士ドットコムは8年間実質的に赤字を継続するが、それでもポジティブでいられたのは、大学時代にサッカーで大きな挫折を味わったからだろう。マンガ『キャプテン翼』の影響から小学校から始めたサッカーは、一人暮らしをしていた高校時代も頑張っていた。左サイドバックとして、守備も攻撃もこなし、レギュラーとなった。高校三年の春の大会は県でベスト4まで勝ち進み、全国大会にでるため友人の誘いを受けて、冬の大会まで現役を続ける。多くの人は受験勉強のため、引退するにもかかわらずだ。そして、高校三年生の10月に県ベスト16で敗退。3カ月の受験勉強を経て、慶應義塾大学法学部法律科に進み、体育会のサッカー部に入った。

大学でも通用すると思っていたところ、大きな壁が立ちはだかる。配属先は「三軍」。全国大会で優勝を争うような高校から入ってきた選手と比べれば、パスの精度も足技も戦術面の習得もかなわなかった。そんな一軍選手は練習熱心でもあり、差は開く一方だった。そして、六本木のディスコでアルバイトを始め、やがてサッカー部を辞めた。大好きなサッカーで大きな挫折を味わった。

エリート弁護士の道を「途中下車」
whitetag/iStock/Thinkstock

大学入試試験は高校サッカー部引退後の3カ月で乗り越えた。だから司法試験も6カ月で乗り切れるのではと本気で考え、試験準備を開始した。択一試験は合格するも、それに続く論文試験では不合格。判明した順位から、あと数十人抜いたら合格していたかもしれなかったのだ。6カ月しか勉強していないから、という言い訳をしていたから不合格になったのかもしれない。次は二度と自分に負けないと心に誓った。

人一倍泥臭く勉強し、予備校では最前列に座り、一日に使うお金は200円というストイックな生活を続けた。模擬試験では全国2000名のトップを取り、血尿が出るトラブルもあったが、翌年の司法試験で合格することができた。司法試験に合格すると人生が全く変わってしまった。誘われる食事は豪華になり、訪問したオフィスはふかふかのカーペットに立派な受付がある。

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要約公開日 2015.03.31
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