未来をつくる起業家

~日本発スタートアップの失敗と成功 20ストーリー~
未読
未来をつくる起業家
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~日本発スタートアップの失敗と成功 20ストーリー~
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未来をつくる起業家
出版社
クロスメディア・パブリッシング

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出版日
2015年03月20日
評点
総合
4.0
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.5
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おすすめポイント

日本の未来の起業家たちに、ここまで明快な「壁を突破するヒント」と勇気を与えてくれる本が存在しただろうか。本書は、日米で活躍するトップヘッドハンターである著者が、魅力あふれるIT起業家たち20名のリアルな体験談をインタビューしたものである。日本でも起業ブームが起きつつあるとはいえ、優秀な若者が起業という道を選ぶことはまだまだ少ないのが現状だ。スタートアップの際に参考になる情報が不足している現状に一石を投じている。日本発のIT起業家たちの多種多様な起業ストーリーや戦略、戦術、そしてアイデアの磨き方や、資金調達の方法、イグジット戦略、人材を定着させる方法といった実践的なアドバイスが凝縮された一冊だ。

失敗談とそこから得られた学びを余すことなく公開し、それぞれの成功・失敗の背景にある野望や葛藤を追体験できる本書は、単に起業家の成功美談を取り上げているような類書とは一線を画す。

何より、起業家たちの経験談やビジョンからにじみ出る彼らの強烈なエネルギーや人柄の魅力に引き込まれ、読後には新しいことへの挑戦意欲が高まってくる。彼らの経営哲学や価値観、アドバイスを読み比べていく中で、成功をつかむ起業家の共通項が見えてくるし、一方で、成功までのステップが意外にも多様であることにも気づくことだろう。これからの起業家にとっては今後訪れるであろう困難を突破するための武器を身に付けるための必読書だと言える。この本を読んで、起業の一歩を踏み出す人が増えれば、この上ない喜びである。

ライター画像
松尾美里

著者

ケイシー・ウォール
創業者 & CEO ウォール・アンド・ケース
創業者 & マネージング・パートナー レッド・ブリック・ベンチャー
米国ニューヨーク州出身、サウジアラビアの砂漠地帯で幼少期を過ごした。米国テキサス大学オースティン校を卒業後、日本に移住。エグゼクティブ人材に特化した人材紹介会社ウォール・アンド・ケースを創業、現在同社は東京、サンフランシスコにてサービスを行い、2015年にはベルリンに進出予定。最も優秀なヘッドハンターに贈られる賞の受賞歴があり、日本語も堪能。また、東京を拠点としたエンジェル投資及びインターネット企業のインキュベーションを行うレッド・ブリック・ベンチャー社を創業。

本書の要点

  • 要点
    1
    起業家にとって大切なことは、強いビジョンを持ち、誰よりも早く意思決定をし、リスクを取ることだ。また、失敗経験から多くを学んで、失敗を繰り返さないようにレベルアップすることが成長の近道である。
  • 要点
    2
    スタートアップを大きく成長させるには、経営者が大きなビジョンを語り、優秀なプレーヤーを採用することで、チームのモチベーションを高めていくことが大事である。
  • 要点
    3
    プロダクトをつくる前に、顧客の声を聞くことで、自分たちのアイデアにそれなりの価値があるかどうかを判断できる。人が必要とするものをつくるのが原則だ。

要約

起業の失敗を糧にグローバルに挑戦する~小林清剛氏~

2度の失敗で学んだこと

スマートフォン向けの広告配信事業を手がけるノボットを創業し、2011年にKDDIに売却した小林清剛氏。彼にとってノボットは3度目に立ち上げた会社であった。

大学時代に仕事の楽しさに気づき、最初は友人の誘いでコーヒーの輸入と通販の会社を始めた小林氏は、2つ目の会社を立ち上げ、日本一の品揃えを誇るコーヒー通販サイトをつくった。しかし、構造的に儲からない事業モデルであることに気づけずに失敗し、大学卒業時には借金を負うことになってしまう。それでも彼は起業を諦めることなく、数百万の借金を完済するまでの約1年半もの間、次の会社を始めるためのアイデアを100個以上考えていた。起業家を続けているのは、仲間と一緒に創った事業が価値を生み出し、それに対して誰かが喜んでくれるというサイクルを生み出すことが楽しいからだという。

彼はこう言う。「事業にはこうしたら必ずうまくいくというセオリーは存在しない。起業家が成長するための最良の方法は、失敗経験から多くを学んで、失敗を繰り返さないようにレベルアップしていくことだ。」現に1社目と2社目で失敗した理由を、100個程度書き出して定期的に見直し、今ではその80%以上を改善している。

起業家にとって大切なこと
Ellagrin/iStock/Thinkstock

起業家にとって大切なことは、3年、5年、10年後の未来に対して、自分が誰よりも信じられる強いビジョンを持つことだと小林氏は説く。周囲に反対されても、自分の信じる未来に対して誰よりも早くリスクを取ることである。小林氏の場合はスマートフォンの成長への確信であった。

意思決定において重要なのは、「直接関係者からヒアリングして得られる情報」である。ガラケー全盛だった2009年当時に、スマートフォン向けの広告が伸びるという可能性に気づくことができたのは、大手メーカー勤務の友人から得た「膨大なスマートフォンの部品が世界中に出荷されている」という情報のおかげだった。

また、意思決定のための情報収集は重要だが、起業家にとって、リスクを取る意思決定を早く行うことはさらに重要だ。最後の最後には経営者自身が決めなければならない。

ノボットをKDDIに売却した一番の理由は、スマートフォン広告事業では日本でGoogleに勝てないと思ったからだ。当時は設立2、3年で会社を売却するケースは例外的だったが、アジアで一番を狙うためには、大きな資本があり、かつアジアに積極的に展開する会社と一緒になるほうがよいと判断した。

グローバルに活躍する日本のスタートアップを増やすには
emojoez/iStock/Thinkstock

彼は2013年末から米国で起業をしている。米国では、失敗しても何度も挑戦する起業家がたくさんいる。「一度失敗すると立ち直れない」という日本のカルチャーを変えていくには、起業家だけでなく投資家の意識の変化も必要だ。日本では、失敗の評価によっては失敗した起業家に再び投資するという投資家はほとんどいないのが実情だからである。

日本と米国の市場の環境の差は非常に大きい。グローバルな製品をつくるには、日本人向けにスタートするのではなく、英語で製品をつくり、共同創業者や従業員に他国のメンバーを入れるほうが良い。

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要約公開日 2015.04.10
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