栗山ノート2

世界一への軌跡
未読
栗山ノート2
栗山ノート2
世界一への軌跡
未読
栗山ノート2
出版社
出版日
2023年07月30日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

日本中が歓喜した、2023年の世界野球「WBC」での侍ジャパンの優勝。監督である栗山英樹氏は、毎晩『四書五経』の『大学』や『易経』をあたり、その日の行いや日々の考えを振り返ってノートに記している。2019年に刊行された『栗山ノート』は11万部のベストセラーであり、野球関係者のみならず、経営者やサラリーマンなど「より良く生きたい」と願うビジネスパーソンたちの間でも話題となっている。

本書はその続編であり、WBC日本代表監督に任命されてから優勝するまでの日々を、著者自身が振り返ったものだ。大谷翔平やダルビッシュ有などのメジャーリーガーが参戦した今大会は、最後に日本が優勝した2009年大会以上に期待が大きく、「負けたら終わり」というプレッシャーのなか、選手のみならず栗山監督自身も戦っていたことがよく分かる。

スポーツとは肉体の競技である。そして、人間の肉体ほど精神で制御しにくいものはない。しかし「スポーツで相手に勝とう」と思うならば、精神を研ぎ澄まし、肉体をコントロールしなければならない。さらに、野球はチームスポーツである。日本に野球が伝わって以来、故野村克也監督などの「野球学」の研究により、日本野球は独自の進化を遂げてきた。奇しくも栗山氏は野村氏の教え子の1人だ。「知」を駆使して勝負するスタイルは共通するものがある。

日本野球が「ベースボールの国」アメリカに勝つまでの感動の軌跡を、本書でもう一度体験しよう。

ライター画像
湯浅大輝

著者

栗山英樹(くりやま ひでき)
1961年生まれ。東京都出身。創価高校、東京学芸大学を経て、1984年にドラフト外で内野手としてヤクルト・スワローズに入団。1年目で1軍デビューを果たす。俊足巧打の外野手で、1989年にはゴールデングラブ賞を獲得。1990年のシーズン終了後、怪我や病気が重なり引退。引退後は解説者、スポーツジャーナリストとして野球のみならずスポーツ全般の魅力を伝えると同時に、白鴎大学の教授として教鞭を執るなど多岐にわたって活躍。2011年11月、北海道日本ハムファイターズの監督に就任。監督1年目でパ・リーグ制覇。2016年には2度目のリーグ制覇、そして日本一に輝き、正力松太郎賞を受賞。2021年11月、北海道日本ハムファイターズ監督を退任。同年12月、野球日本代表「侍ジャパン」トップチーム監督に就任。2023年3月、WBC優勝。同年5月、日本代表監督を退任。

本書の要点

  • 要点
    1
    侍ジャパンの監督を打診された著者は、「自分は適任ではない」と一度は断ることを考えた。しかし「目の前の物事にすべてを尽くし、できることをやり切る」という「尽己」の言葉を思い出し、引き受けることを決意する。
  • 要点
    2
    WBC初戦の中国戦序盤、スコアが動かず苦戦を強いられた。しかし著者は「この逆境に耐えればチームとしても個人としても成長できる」と自身に言い聞かせ、チームは見事勝利を収めることができた。
  • 要点
    3
    侍ジャパンが優勝できたのは、己を捨ててチームに尽くす「無私道」の姿勢があったからだ。

要約

WBC監督就任

命を知らざれば、以て君子偽ることなし

2021年11月、著者は10年間務めた北海道日本ハムファイターズの監督を退任した。そして、本拠地最終戦の前日である10月26日、関係者から「侍ジャパンの監督になってほしい」という話を持ちかけられた。あまりの大役に、著者は反射的に「断ることはできますか?」と答えてしまった。

自分よりも実績のある指導者はたくさんいるし、ファイターズではどんな手を打ってもチームが好転しないという経験もした。「自分はふさわしくない」という想いに苛まれるなか、「尽己」の二文字が頭に浮かんだ。幕末の儒家・陽明学者である山田方谷の言葉で「目の前の物事にすべてを尽くし、できることをやり切る」という意味がある。まだ見たことのない景色を見てみたい。そんな欲求にかき立てられ、著者は腹をくくった。

「私利私欲を捨て、天命に生きるべき」という『論語』の一節「命を知らざれば、以て君子偽ることなし」も背中を押してくれた。著者は「やるしかないだろう!」と闘志がみなぎるのを感じた。

武士道と云ふは死ぬ事と見つけたり
Josiah S/gettyimages

選手選考でもっとも難しかったのは、メジャーリーガーの招集だ。選手たちの出場は、所属チームに委ねられているところもあるからだ。

著者はアメリカ行きの飛行機の中で、18世紀の佐賀藩士・山本常朝の『葉隠』の一文、「武士道と云ふは死ぬ事と見つけたり」を書き記した。「死を覚悟するくらいの気持ちで取り組めば、自分のすべきことをまっとうできる」と、著者は理解している。

メジャーリーガーが出場しなければ、チーム構想は根本から崩れてしまう。そして何より、誰もが見たいと思えるメンバーで臨めないと、日本野球が崩壊する可能性もある。著者はそのくらいの危機感を持っていた。

結果として、ダルビッシュ有、大谷翔平、吉田正尚、鈴木誠也、そしてヌートバーの5名の出場確約を取り付けた。吉田に至っては、メジャー1年目にもかかわらず、本人から直々に「出たい」と連絡をもらった。著者はあまりの嬉しさに目頭が熱くなった。

私たちは普段の生活で、「死を覚悟するくらいの気持ち」になることはほとんどない。しかし、人生の大一番は誰にでも訪れる。そのときに力を発揮するため、この言葉を心に留めて日頃から準備をしておくといいのではないだろうか。

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要約公開日 2023.10.28
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