ガチャガチャの経済学

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プレジデント社

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出版日
2023年09月15日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

白い丸みを帯びたマシーンにコインを入れて、ハンドルを回す。硬い手応えに力を込めて回していくと、コロコロと小さなカプセルが転がってくる。はやる気持ちをおさえてカプセルを手に取り、中身に一喜一憂する――そんな経験は誰もが持っているだろう。

かつては取るに足らない子どものおもちゃと思われがちだった「ガチャガチャ」だが、今やその姿は多くの場所で見られるようになった。ショッピングモールには必ずと言っていいほど大規模なコーナーが設けられているし、駅の構内で見かけることもある。じっくり眺めてみると、有名キャラクターなどに混じって「いったい誰が買うのだろう?」と思うような奇妙な商品が並んでいることに気づくだろう。

実はこうしたガチャガチャは、急激に市場を拡げている成長産業だ。生活の中で見かけるようになったのも、謎に思える商品が出てきたのも、人気があるゆえの拡大と多様化なのである。

本書はこうした「ガチャガチャ」の現状と特徴を、ビジネスとして解き明かしていく。たかだか数百円のおもちゃを売るビジネスが、今の日本でなぜ急成長しているのか。身近でありながら意外にも知らないガチャガチャの「中身」を確かめてみてほしい。

ライター画像
池田明季哉

著者

小野尾勝彦(おのお かつひこ)
一般社団法人日本ガチャガチャ協会 代表理事、株式会社築地ファクトリー 代表取締役
千葉県船橋市出身。日本のガチャガチャ元年である1965年生まれ。大学卒業後、プラスチック原料の商社勤務を経て、1994年ガチャガチャメーカーの株式会社ユージン(現・タカラトミーアーツ)に入社し、数多くの商品の企画や開発を手がける。2019年に独立し、現在はガチャガチャビジネスのコンサルティングや商品企画などを行う。現在に至るまで約30年間にわたってガチャガチャビジネスに携わり、業界の歴史やビジネス事情に精通した数少ないガチャガチャビジネスの伝道師として、メディア出演やインタビュー、講演など多方面で活躍中。

本書の要点

  • 要点
    1
    ガチャガチャは610億円の市場規模を誇る成長産業である。
  • 要点
    2
    20代〜30代の若い女性客の増加と、大量のマシーンが並ぶ専門店の登場によって大きく成長した。
  • 要点
    3
    クオリティが高く、品揃えが豊かで、機械を回す体験の楽しさも魅力である。SNSとの相性もよく、基本的に再生産されない一期一会であることも特徴だ。
  • 要点
    4
    高価格化やオンライン化など変革も次々と起きており、世界進出も進みつつある。

要約

コロナ禍でも急成長したガチャガチャビジネス

610億円の成長産業
cestylecg/gettyimages

「ガチャガチャ」は、「コインを挿入した後にハンドルを回すと、玩具や雑貨などが入ったカプセルがランダムに出てくる小型自動販売機」だ。メーカーがさまざまな名称を商標登録しているため、メディアでは「カプセルトイ」「カプセル玩具」という呼び方が一般的である。しかし近年は大人向けの雑貨、精巧なフィギュアやミニチュアにはじまり、「カプセルに入るものならなんでもあり」という「実にバラエティ豊かな世界」になっている。

ここ数年、ガチャガチャは異様な盛り上がりを見せている。ショッピングモールをはじめとしたさまざまな場所でガチャガチャを見かけた人も多いだろう。特に新型コロナウィルスの感染拡大以降、ガチャガチャは大きく市場を拡大している。

一般社団法人日本玩具協会によって発表された2022年度のカプセルトイの市場規模は、過去最大の610億円となっている。前年の450億円からは35.6%のアップだ。2012年度が270億円であったことを考えれば、この10年間で市場は2倍以上に拡大したことになる。これはコロナ禍で半減したカラオケや、レトルトカレーとおおむね同等の市場規模であり、決して小さくないことがわかる。しかも、この日本玩具協会のデータには大手以外のガチャガチャメーカーの大半が含まれていないため、実際はもっと大きな数字になると思われる。

マシーンの設置台数は推定60万台(郵便ポストは18万台)、設置場所は推定7万カ所(コンビニは約5万7000店舗)。メーカーは約40社まで増えている。

専門店の登場とファン層の変化

この盛り上がりの背景にあるのは、「20代から30代の若い女性客の増加」だ。少子化の現状では、「子ども向けの玩具」として子どもだけで市場が拡大することはありえない。もちろん、『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』などのキャラクターものが子ども向け商品の定番ではあるものの、この10年間はそういったキャラクターに頼らない商品の比重が増えている。

また、新型コロナウィルスの感染拡大によって閉店してしまったデパートやショッピングモール内の店舗スペースに、ガチャガチャ専門店を出店するケースが多くあった。大きな工事が不要で、光熱費も人件費もかからないマシーンを置けば、低コストで見栄えのする非接触型の空間を作ることができる。食糧など生活必需品の買い出しに訪れた人たちにとって、「近場にある安価なプチエンターテインメント」として人気を得ることになったのだ。

こうした購買層の変化や、クオリティを求める需要に対して、ガチャガチャは徐々に高価格化してきている。現在の中心価格帯は300円で、500円以上の商品も少なくない。こうした流れは、市場拡大に向けてひとつのポイントになるだろう。

専門店が増加した一方で、通販サイトも登場しつつある。ECサイトではコレクター向けにシリーズを最初からセットで販売しているし、ネットオークションなどで目当てのものだけを買うこともできるようになっている。

こうした市場の拡大にはSNSなどネットとの親和性が関係していることは間違いないが、一方でテレビからブログ、さらにスマホ、そして専門店とSNSというように、情報発信メディアの歩みとともに成長してきた分野だということもできる。ガチャガチャは時代とともにさまざまな変化を遂げながら、これからも拡大する可能性が高いと目されている成長産業なのである。

ガチャガチャ市場拡大の背景

何が出てくるかわからないドキドキ感
Wiphop Sathawirawong/gettyimages

それでは、ガチャガチャの魅力とはなんなのだろうか。ハピネットが2023年1月に発表した「カプセルトイの大人需要実態調査」では「あなたにとってカプセルトイの魅力とは何ですか」という問いに対し、「クオリティの高さ」を挙げる回答が最も多かった。また「何が出るかわからないドキドキ感」や「品ぞろえが豊富」、「機械を回す楽しさ」なども上位にランクインしている。

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要約公開日 2023.12.29
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