「ガチャガチャ」は、「コインを挿入した後にハンドルを回すと、玩具や雑貨などが入ったカプセルがランダムに出てくる小型自動販売機」だ。メーカーがさまざまな名称を商標登録しているため、メディアでは「カプセルトイ」「カプセル玩具」という呼び方が一般的である。しかし近年は大人向けの雑貨、精巧なフィギュアやミニチュアにはじまり、「カプセルに入るものならなんでもあり」という「実にバラエティ豊かな世界」になっている。
ここ数年、ガチャガチャは異様な盛り上がりを見せている。ショッピングモールをはじめとしたさまざまな場所でガチャガチャを見かけた人も多いだろう。特に新型コロナウィルスの感染拡大以降、ガチャガチャは大きく市場を拡大している。
一般社団法人日本玩具協会によって発表された2022年度のカプセルトイの市場規模は、過去最大の610億円となっている。前年の450億円からは35.6%のアップだ。2012年度が270億円であったことを考えれば、この10年間で市場は2倍以上に拡大したことになる。これはコロナ禍で半減したカラオケや、レトルトカレーとおおむね同等の市場規模であり、決して小さくないことがわかる。しかも、この日本玩具協会のデータには大手以外のガチャガチャメーカーの大半が含まれていないため、実際はもっと大きな数字になると思われる。
マシーンの設置台数は推定60万台(郵便ポストは18万台)、設置場所は推定7万カ所(コンビニは約5万7000店舗)。メーカーは約40社まで増えている。
この盛り上がりの背景にあるのは、「20代から30代の若い女性客の増加」だ。少子化の現状では、「子ども向けの玩具」として子どもだけで市場が拡大することはありえない。もちろん、『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』などのキャラクターものが子ども向け商品の定番ではあるものの、この10年間はそういったキャラクターに頼らない商品の比重が増えている。
また、新型コロナウィルスの感染拡大によって閉店してしまったデパートやショッピングモール内の店舗スペースに、ガチャガチャ専門店を出店するケースが多くあった。大きな工事が不要で、光熱費も人件費もかからないマシーンを置けば、低コストで見栄えのする非接触型の空間を作ることができる。食糧など生活必需品の買い出しに訪れた人たちにとって、「近場にある安価なプチエンターテインメント」として人気を得ることになったのだ。
こうした購買層の変化や、クオリティを求める需要に対して、ガチャガチャは徐々に高価格化してきている。現在の中心価格帯は300円で、500円以上の商品も少なくない。こうした流れは、市場拡大に向けてひとつのポイントになるだろう。
専門店が増加した一方で、通販サイトも登場しつつある。ECサイトではコレクター向けにシリーズを最初からセットで販売しているし、ネットオークションなどで目当てのものだけを買うこともできるようになっている。
こうした市場の拡大にはSNSなどネットとの親和性が関係していることは間違いないが、一方でテレビからブログ、さらにスマホ、そして専門店とSNSというように、情報発信メディアの歩みとともに成長してきた分野だということもできる。ガチャガチャは時代とともにさまざまな変化を遂げながら、これからも拡大する可能性が高いと目されている成長産業なのである。
それでは、ガチャガチャの魅力とはなんなのだろうか。ハピネットが2023年1月に発表した「カプセルトイの大人需要実態調査」では「あなたにとってカプセルトイの魅力とは何ですか」という問いに対し、「クオリティの高さ」を挙げる回答が最も多かった。また「何が出るかわからないドキドキ感」や「品ぞろえが豊富」、「機械を回す楽しさ」なども上位にランクインしている。
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