2023年2月にスペイン・バルセロナで開催された国際見本市「モバイル・ワールド・コングレス」。世界200の国から6万~8万人の通信事業関係者が集まるこのイベントで、楽天グループ会長兼社長の三木谷は商談に明け暮れていた。
国内では「経営難」といわれることも多いが、世界中が楽天に注目している。背景にあるのは、楽天モバイルが世界で初めて実現した、携帯ネットワークの完全仮想化だ。楽天が挑戦した当初、「絶対に失敗する」という見方が強かった。しかし、現在すでに日本国内で500万人に近いユーザーが、日々楽天モバイルのサービスを利用している。
三木谷は楽天市場や楽天カードで得た利益を携帯電話事業に注ぎ込み、仮想化に成功した一方で赤字は拡大している。三木谷からすれば世界進出に向けた「賭け金」であるが、国内メディアは「業績不振」と見ている。だが、たとえば電気自動車の廉価モデル開発に苦心していたテスラは、当時四半期ごとに3000億~4000億の損失を出していたとされる。そこから見れば「かわいいもの」といえるだろう。
三木谷とバルセロナといえば、2016年から始まったFCバルセロナの縁も深い。ホームスタジアムの「カンプ・ノウ」を訪れた三木谷は、FCバルセロナ会長とサインを交わし、5年で300億円にものぼるパートナーシップ契約を結んだ。
当時、楽天グループの海外事業といえばメッセージング・アプリやキャッシュバッククーポンサイトくらいだった。契約を結んだ当時、三木谷はこう語っていた。「プロ野球に参入したときも、みんなにバカにされたけど、あれで楽天は全国区になった。同じことを今度は世界レベルでやる」。
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