僕(著者)が起業してちょうど5年が経った頃、僕はこの先何をしたいのかわからなくなっていた。3坪の行商のたこ焼き屋から始めた事業は、5年で150坪の大型レストランにまで成長した。お店は連日満席で順調そのもの。それなのに、僕の心は乾いていた。自分はこの先どうなりたいのか、やりたいことは何なのか。
僕には人生の師匠がいる。師匠は僕の人生を大きく変えた人物だ。「君は誰と生きるか?」という問いをもらい、「身近な人を大切にする」という師匠の教えを忠実に守ることで、人間関係や仕事が驚くほどうまくいくようになったのだ。
やりたいことがわからない僕に、師匠は新しい問いを投げかけた。「君はこれからどうなりたい?明確な夢とか、やりたいことはある?」。
僕は師匠に怒られることを覚悟して、正直に「夢というか、その手前のやりたいこともよくわからないんです」と答えた。すると師匠は笑顔になって、大きな声でこう言った。「やりたいことがわからない?だったらこれから何でもできるじゃないか!おめでとう!」
人は夢がなくても成功できる、いや、むしろないほうがかえって大きく育つのだ――。
こうして、師匠の講義が始まった。
師匠は「働くうえで夢より大切なもの、それが何かわかるかい?」と聞いた。僕は考えてみたが、よくわからなかった。
「答えはね、『なぜ』だよ」。
人を動かす原動力になるのは、「なぜ」である。優秀な先生やリーダーは、無意識のうちに「なぜ」を伝え、それを一番に考えさせている。だから下の立場の人たちは自発的に動くのだ。
人間が根源で求めているもっとも大きなものは「意味」である。人は夢をなくしても生きていけるが、自分の存在意義、つまり生きる意味をなくしてしまうと命を絶つこともある。人にとって「意味」はそのくらい重要なものであり、意味がわかれば夢があってもなくても自発的に進んで行く。人は「なぜ」をモチベーションに動くのだ。
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