かつて有能なCEOたちは、社員の力、資金、流通網、ブランドイメージを支配下に置き、それらを結びつけ、確実にマーケットシェアを獲得して利益を生み出す会社を作り上げていた。しかし、現代のように、常に変化する混沌としたビジネス環境においては、こうしたCEO的リーダーシップが通用しなくなっている。
こうした変化の時代において舵取りを行うためには、デザインの力を活かすことが求められる。デザインとは「集団的な変化」を起こすことだ。デザインの力を積極的に活かすリーダーを本書では「DEO(デザイン・エグゼクティブ・オフィサー)」と名付けた。
CEOとDEOは、どちらも「大きな望みを持っている」「自信に満ちている」「理性的」「負けず嫌い」という共通点があるが、DEOはさらに、①変化を起こす、②リスクを冒す、③システム思考をする、④直観力が高い、⑤社会的知性が高い、⑥さっさとやる(GSD)という特徴を持っている。
DEOが「変化」に悩まされることはない。それどころか、変化を奨励したり、自ら推進したりする。ビジョンを達成しようとしたら、変化を起こすことになったというだけだからだ。
DEOはしっかりとした骨組みを持つ、形のはっきりしたビジョンを設定する。人を惹きつける魅力的な将来像に色付けし、達成可能な明確な目標を定め、そこに至るまでの合理的なロードマップを設定する。その後、データやフィードバックを集めて、現状のままでは夢を実現できないと思ったら、自らの進行方向を改め、軌道修正する。
DEOは、人と違うことを考えたりやったりしようとする。それができれば、競争上の強みになることに気づいているのだ。
DEOは、リスクを受け入れる。リスクは人生につきものだし、創造力を発揮するのに欠かせないものだと考えているからだ。事実、画期的な新製品やオリジナル商品にはリスクを伴わないものなど1つもない。どんな成功も、どこかの時点でリスクを冒した結果なのである。
DEOはリスクを抑えたり、回避したりするどころか、自分でコントロールできるものとして気楽に操ろうとする。また、リスクを冒すことを「実験」と言い換えることで、自分自身や社員の不安を和らげている。「実験」なら、その結果が成功であれ失敗であれ、何らかの知見を得るとか、いい経験をするという成果を得られることになるからだ。仮説や枠組みをしっかり構築することで、リスクの性質を明確にしたり、リスクを正確に評価することができる。
また、「(小さく賭けることで)リスクのサイズを調節する」「(1人でなく協力者と一緒に)リスクを共有する」「リスクを冒したことを称える」といったやり方で、賢くリスクを冒すことができる。
DEOは「システム思考」をする。「システム思考」とは、つながりを理解する能力のことだ。
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