トークの教室

「面白いトーク」はどのように生まれるのか
未読
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「面白いトーク」はどのように生まれるのか
未読
トークの教室
出版社
河出書房新社

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出版日
2024年02月28日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

長らく続いている現在進行形の番組でありながら、もはや伝説になりかけているラジオ番組『オードリーのオールナイトニッポン』。そこでよく名前が挙がる「青銅さん」、その人こそ本書の著者である。作家・脚本家・放送作家として、テレビやラジオの台本なども手掛ける著者が、中でも担当することが多いのはラジオ番組だ。ラジオ番組にはたいてい、近況のトークがある。番組をリスナーとして楽しんでいると、パーソナリティーはやすやすと近況トークをしているように感じられる。ところが、これを最初からできる人は少ないのだという。いかにも話し慣れていそうで、劇場では笑いをとることのできる芸人さんたちでさえ、ラジオのトークがうまくできないことがあるのだ。そこで悩む人がいれば、相談に乗ってアドバイスをするのが著者の役割だ。

本書では、「トーク」について考えてきた著者が、現場の経験を通して培った方法論を整理して紹介する。トークにまつわるいくつもの固定観念を扱った「『面白いトーク』という呪縛」という章から始まり、「トークの構造」や、つまらないトークを反面教師的に分解した「『つまらない』にはワケがある」、さらにトークの語り口を扱った章など、理論から実践まで、いくつものポイントがまとまっている。「トーク」と聞くと、一般の人には縁遠いものだと感じられるかもしれないが、そんなことはない。私たちはふだんの生活でたくさんの時間を会話に費やしている。トークの構造が理解できれば、その時間をより豊かにすることができるはずだ。

著者

藤井青銅(ふじい せいどう)
1955年生まれ、23歳で第一回「星新一ショートショートコンテスト」入賞後、作家・脚本家・放送作家となる。「夜のドラマハウス」「FMシアター」等でラジオドラマを書く。「伊集院光のOh!デカナイト」「ウッチャンナンチャンのオールナイトニッポン」「オードリーのオールナイトニッポン」等も担当。著書に『ラジオな日々』『国会話法の正体』『一芸を究めない』他多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    トークにはいくつもの「呪縛」がある。たとえばエピソードトークについては「エピソードそのもの」が重要ではなく、あくまで「いかに本当にあったか」と思わせる方が重要だ。
  • 要点
    2
    つまらないトークは長かったり、話が飛び飛びだったりする。これらを反面教師にすると良い。
  • 要点
    3
    トークには「切り口」と「語り口」がある。たとえば何もないような場所でも面白くする着眼点が切り口であり、語り口はよりトークの立体感を持たせる技術である。

要約

トークにまつわるいくつもの「呪縛」

「フリートーク」という名の呪縛

著者はかつて、芸人さんにフリートークをしてもらう『フリートーカー・ジャック!』というラジオ番組を企画したことがある。メディアで生き残っている人はトークがうまい。だが、売れなければトークを磨く機会がないというジレンマがある。だから、まだ売れていない人にトークを練習してもらう番組を目指したのだ。

集められたのは芸歴10年前後の芸人さん。劇場ではフリートークでも笑いをとっている人たちだが、「1人で5分話してください」と依頼しても意外にうまくできない。

劇場で笑いをとれている人でもラジオのフリートークが上手くいかない理由は、いくつかある。そもそも、劇場にいる人は芸人のファンであり、お金を払って見にきているのだから、途中で席を立って出ていくことはない。お客さんの反応を前提にすれば、ある程度アドリブでも時間を持たせることができる。一方、ラジオでは出演者のことを知らない人が聞いていることを前提に、いかに聞き続けてもらうかを考えなければならない。しかも、目の前に反応してくれる人がいない。

ふだんのライブでしゃべりに自信を持っている人は、「フリートーク」を「自由なトーク」だと考えて、アドリブでできると考えることが多い。しかし、たいていの場合、番組ではうまくいかない。ある程度の準備をしているからこそ、フリーに話すことができるのだ。

「エピソードトーク」という名の呪縛
recep-bg/gettyimages

エピソードトークと聞くと、ドラマチックかつボリュームのある内容を思い浮かべがちだ。ドラマチックな人生を送ってきたわけではない人には語るべきエピソードはないと考えるかもしれないが、それはまったくの誤解だ。変わった体験をしたからといって、面白いエピソードが生まれるとは限らない。エピソードを持っていても、本人がそれに気づいていないだけという場合が多いのだ。

『フリートーカー・ジャック!』には、無名だった頃のオードリーの若林正恭さんがやってきたことがある。出演回数を重ねて手持ちの話がなくなった若林さんは、トークのネタを探して高尾山に登ったのだという。しかし、何も起こらなかった。

その話を聞いた著者は、「むかし伊集院さんも同じことを言ってたよ」と笑って答えた。わざわざエピソードを作りに行っても、普通の人の日常にはドラマチックな出来事はそうそう起こらない。面白いトークを聞くと、そこにすごいエピソードがあったように感じてしまうだけなのだ。聞いている相手にそう思われることができるのが、うまいトークだということだ。

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要約公開日 2024.06.05
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