サイゼリヤの料理は、まずくて高い。あんなまずいものを出してしまって、お客様に申し訳ない。サイゼリヤの創業者である著者がそう言うと誰もが驚くが、著者は大真面目だ。
著者が「サイゼリヤの料理は最高だ! 安くておいしくて申し分がない」と言ったら、何が起きるだろう。従業員たちは「もう努力しなくていいんだ」と考え、現状維持すらできなくなってしまうかもしれない。著者自身が、そしてサイゼリヤの従業員みんなが「サイゼリヤの料理は、まずくて高い」と捉えているからこそ、より「安くておいしい」サイゼリヤへ近づくことができ、お客様を喜ばせられるのだ。
「サイゼリヤの料理は、まずくて高い」と言い続けていると、自然と欠点、問題、課題が見えてきて、どんどん進化していける。
サイゼリヤは、昔から「一番儲かることをしよう」ではなく「人に喜んでもらえることをしよう」という気概でやってきた。
お客様の立場で考えたときに、一番喜んでもらえるのは「安さ」ではないだろうか。誰でもお財布を気にせず、お腹いっぱい食べて、仲間たちと語らって、「ああ、楽しかったな」と満足して帰ってほしい……。その思いから、サイゼリヤは断続的に値下げをしてきた。
さほど売れないものを安くするのは、比較的簡単だ。一方で、すでに何度も値下げと改善を経てきた人気商品を、さらに安く、おいしくしていくのは簡単ではない。しかし、これが最もお客様に喜ばれるのだ。
サイゼリヤで最も売れているのは「ミラノ風ドリア」だ。480円で販売されていた頃から大人気商品だった。
そんなミラノ風ドリアを、1999年11月、上場を機に290円に値下げしたところ、さらに爆発的人気となった。原価率は上がり、客単価は下がるため、経営という観点からは、1つもいいことはない。だが、「お客様は必ず喜んでくれる」という確信があったから決断した。結果、売上数量は約3倍になり、お客様の数も激増したのだ。
一番難しいことこそ、一番喜ばれるものだ。あなたの仕事で、一番喜ばれることは何だろう?
「より安く、よりおいしい料理を提供し、お客様に喜んでもらうこと」にすべてのリソースを投入してきたのがサイゼリヤだ。反対に言えば、この2つに関係のないことにはリソースを割かない。
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