2009年に日本経済新聞に掲載された、桜美林大学の芳沢光雄教授が行った「ジャンケンに関する研究結果」によると、学生725人による、延べ1万1567回のじゃんけんの結果、グーを出す人が35.0%と一番多かった。このことからじゃんけんでは、パーを出すのが一番勝ちやすい選択だといえる。
しかし、じゃんけんをはじめとする運のゲームや、ギャンブルには、100%勝つ方法は存在しない。勝率を上げるためには、一回きりの勝負ではなく「複数回の勝負にして、勝った回数が多い方が勝利する」というルールにするとよい。スポーツでは、数回戦のゲームを行って総合的に勝敗をつけることがある。これは、1回の勝負では運よく勝つことがあるが、数回戦の長期戦のゲームならば実力のあるチームが勝つという統計的な前提に基づくためである。じゃんけんであれば、「本当の実力=各手の勝率」である。潜在的な勝率に偏りがあるとき、長期戦にすることによって本当の実力がデータに表れやすいことを「大数の法則」という。
「大数の法則」はサイコロで考えるとわかりやすい。サイコロを振って各数字が出現する確率は、それぞれ1/6(16.67%)である。だが、サイコロを6回投げたとしても、各目1回ずつ出るとは限らない。サイコロを振る回数を12回にしたら各目が出る期待値は2回ずつであるが、実際にコンピュータでシミュレーションすると、出現確率は0~33.3%とバラつきがある。しかし投げる回数を60回、600回、6000回と増やしていくと、各目の出現確率のバラつきはどんどん小さくなっていく。試行回数が多いほど、どの出目の出現確率も16.67%に近づいていく大数の法則が働くからだ。
大数の法則は、幅広く利用されている。ギャンブル店は、お客がたくさんプレイするほど、設定した控除率(店の取り分)に収束しやすいようにコントロールしている。自動車保険の場合なら事故を起こしやすそうな人、銀行の貸付金利では返済が難しそうな人ほど、保険料や金利が高くなるのも、確率が絡んでいる。加入者を増やすのが重要なのは、加入者が増えれば増えるほど、予測が正確になっていくからだ。
ギャンブルに関する重要な指標に、まず「期待値」がある。「年末ジャンボ宝くじ」でいえば、期待値は1枚あたりの当せん金額の平均値のことである。「当せん金額の合計÷くじ本数」で導くことができる1枚あたりの価値は149円。つまり、300円払って149円のくじを買っていることになる。
次に重要な指標が「還元率」で、これは投資したときにそのうち何%がリターンとして返ってくるかを表す。宝くじの場合は「当せん金額の合計÷購入金額の合計」で計算され、49.8%とギャンブルの中では最低ランクだ。
最後の指標は、投資したときに、そのうち何%が運営者、すなわち胴元に引かれるのかという指標である「控除率」だ。これは還元率と裏表になっていて、「1-還元率」で計算される。宝くじでは50.2%。
まとめると、「一万円の宝くじを買ったら平均して5000円分くらい当たる」計算になる。しかし、多くの人はそこまで当たるイメージを持っていないのではないだろうか。おそらく「1万円分買ったら3000円当たるか当たらないか」くらいの感覚だろう。
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