社会の変化を捉え、ブームに飛び乗ることは、商売のセオリーだ。2018年ごろのタピオカ屋の急増と成功はその典型といえるだろう。
じつは、タピオカのブームがやってくるのは3回目となる。1回目は1992年、2回目は2008年、そして3回目が2018年だ。3回目のブームは、LCC(格安航空会社)の就航により、台湾旅行の人気に火がついたことで巻き起こった。
3回目のブームでは、インスタグラムが重要なキーワードとなった。新語・流行語大賞で「タピる」がランクインした前々年の2017年には「インスタ映え」が年間大賞に選ばれ、若いSNSユーザーたちはインスタ映えするネタを探していた。タピオカミルクティは、飲料としてというより、インスタ映えするアイテムとして買われていたのだ。
この現象は「コト消費」の表れといえる。コト消費とは、体験の価値を重視して商品を購入する消費行動のことだ。従来の消費はモノの機能を重視していたが、多機能で高機能なモノが世の中に行き渡った結果、モノを通じた形ある価値よりも、モノを持ったり使ったりすることを通じた形のない価値(コト)が重視されるようになった。これは事業を考えるうえで押さえておきたい社会変化の1つだ。
何がブームになるかは分からないし、ブームがどれくらい続くかも分からない。だからこそ事業開発においては、どんな商品にも寿命(プロダクトライフサイクル)があることを踏まえ、いつでも撤退できるようにしておかなければならない。そのためには、少資金、省スペースで開店(開業)するなど、開業にかかるコスト(イニシャルコスト)を安く抑えることがポイントだ。ブームが長続きするようなら追加投資をし、冷めつつあると感じたら次の事業機会を探すといった柔軟性と俊敏性を持っておくことで、時代の変化に乗ることができるのだ。
さて、一時期は街中に溢れていたタピオカ屋だが、今も残っているのは一部のチェーンだけだ。消えたタピオカ屋がどこへいったかというと、ある店は唐揚げ屋に、ある店はマリトッツォの店に、またある店は焼き芋の店になった。
イニシャルコストを徹底的に抑えて短期で利益を回収し、ブームが去ったらすぐに見切りを付けて撤退する――。このようにして、消えたタピオカ屋は次のブームに乗り換え、新たな収益を生み出しているのだ。
立ち飲み屋はなぜ繁盛しているのか。
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