今、管理職として働くことは「罰ゲーム」と化しつつある。
「朝から晩まで会議ばかりで、夜からしか自分の仕事ができない」
「メンタルヘルスの不調で、常に部下が欠けている状態で働いている」
……こうした課題が次から次へと湧いてきて、管理職の心身をすり減らす。メンバーはそんな上司を横目で見て、管理職に就くことにますます魅力を感じなくなる――。
この問題は深刻だ。管理職ポストの後継者不足、イノベーション不足、部下育成不足、管理者本人のストレス、自殺という悲劇に至るまで、管理職の「罰ゲーム化」の影響はもはや経営・組織の問題の域を超え、「社会課題」と呼ぶべき事態になっている。
パーソル総合研究所の国際調査によると、日本における「管理職になりたいメンバー層の割合」は21.4%と、14カ国のうち断トツの最下位となっている。同じく管理職意欲の男女比率を見ても、女性の意欲の低さは断トツ最下位だ。
年代ごとの管理職意欲に目を向けると、日本の異常さがさらに際立つ。日本だけ40代で一気に管理職意欲が下がるのだ。つまり、他国では何歳になっても管理職を目指し続ける人が多い一方で、日本では、40代までに管理職になれなかった人は「諦める」のである。
時系列でも確認してみよう。日本生産性本部の調査を見ると、平成最後の10年間のデータにおいて、昇進について「どうでもよい」という回答だけが男女ともに高まっている。同様に、博報堂生活総合研究所の調査データでは、「会社の中で出世したい」という設問に肯定的な回答をする人は1998年の19.1%から徐々に低下し、2022年には13.2%だ。
これらのデータを総合すると、日本では、管理職への出世に魅力を感じる人が少なく、この20~30年ほどでその傾向がより顕著になっているといえるだろう。
管理職の罰ゲーム化が進めば、次世代のリーダーは育ちにくくなる。HR総研の企業調査では、どの企業規模でも、直面している課題の断トツは「次世代リーダー育成」だ。
さらにここ数年、優秀な若手が安定した大手企業から去り、スタートアップ企業に流れる傾向にある。20年も会社に奉仕した挙げ句に大した給与も貰えずに苦労ばかりする大手企業より、同年代の仲間たちと切磋琢磨できるスタートアップ企業のほうが魅力的に思えるのも無理はない。
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