人になにかを「話して伝える」ためには、話し始める前の段階で「話す目的」を明確にし、「対象者」を分析するとともに、「話す」という行為の特徴を正しく認識しなければならない。これが本書の「3つの原則」だ。この原則に基づき、本書では具体的な話し方を「言葉」(発する言葉の選び方)と「音声・動作」(非言語情報)の2軸に分けて解説している。
重要なのは、「言葉」と「音声・動作」の両面からアプローチすることである。両方がそろってこそ、本当の意味で話し方は良くなるのだ。
ここでは、3つの原則をもう少し詳しく紹介する。
原則のひとつめは、「話す目的を明確にする」だ。多くの人は、まったく目的意識を持たないまま、なんとなく話しているものだ。だが、目的が明確になっているか否かで、話の質に大きな差が生まれる。
原則のふたつめは、「対象者を分析する」ことだ。聞き手の属性や状況、コミュニケーションのスタイル、知識量などを分析すれば、適切な言葉を選べる。また、自主的に話を聞きたがっているのか、仕方なく聞いているのかなど、対象者の「気持ち」を考えることで、話の組み立て方が変わるだろう。
基本原則の最後は、「話し言葉の意識を持つ」ことだ。「話す」とは、瞬間的に言葉の解釈をしなければならない、とてもシビアなコミュニケーション形態であること、そして、いちど発した言葉は決して取り消せないという特徴を意識しておきたい。
まず「言葉」の戦略のうち、コアメッセージについて紹介する。
コアメッセージとは、話す目的を具体的なフレーズに落とし込んだものを指す。コアメッセージの設定により、本当に伝えたいことを明確にし、相手の記憶に残る話をすることができる。
例えば、会議で部長が来期の抱負を語る場面があったとする。次のふたつの例を比べてみよう。
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