本書の要点

  • 幸せな気分が続かないのは、脳の生存戦略のせいである。人類が今まで生きのびてこられたのは、不安や恐怖という「感情」を使って危険を回避してきたからだ。

  • 「脳の警報センター」である扁桃体は、あらゆる危険に警報を鳴らしてしまうため、誤作動も多い。

  • 脳は身体の一部である。運動をして身体の状態が良くなると、メンタルも改善する。

  • うつになるのは遺伝子のせいではない。うつになりやすい遺伝子を持っていても、自分の意志や運動によってうつになるリスクを減らすことができる。

1 / 3

【必読ポイント!】生きのびるために必要なネガティブ感情

なぜ私たちはずっと幸せでいられないのか

MartinM303/gettyimages

「いつも幸せでいたい」と思っても、私たちは日々苛立ったり落ち込んだり、不安になったりしてしまう。しかし、もし明るくハッピーな感情しかなければ、人類はとっくに絶滅していただろう。脳の最重要任務は「あなたを生かしておくこと」である。そのために脳は感情を使ってメンタルを左右し、行動を起こさせるのだ。人間は歴史の99.9%の時間を狩猟採集民として生きてきた。狩猟採集民の時代、子供の半数はウイルスや細菌の感染によって10代になる前に死んでいた。大人になってからも、病気、飢え、動物の襲撃などによって死ぬ危険と隣合わせだった。私たちの脳はそのような世界で進化したため、脳は今でも「自分たちはサバンナで狩猟採集民として暮らしている」と思っている。そのため、脳は「感情」という「道具」を使って危険を遠ざけ、私たちを安全な状態にいさせようとする。たとえば、崖に近づいた時に「怖い」と感じ、不安になって足がすくむのは、脳が「引き返そう」と働きかけているからである。引き返してほっとするのは、「安心」という感情のごほうびだ。感情とは、周りで起きていることへの反応ではない。周囲の知覚情報と身体の中の情報(心拍や血糖値など)を記憶と組み合わせて、瞬時に理解できるように脳が「まとめ」たものなのだ。人間の集中力には限界があり、一度に1つのことにしか集中できない。そのため、脳がたくさんの情報をまとめて、私たちがすぐ行動に移せるようにしているのである。

もっと見る
この続きを見るには...
残り3523/4183文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2024.05.28
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.

一緒に読まれている要約

なぜか人生がうまくいく「優しい人」の科学
なぜか人生がうまくいく「優しい人」の科学
和田秀樹
自律神経の名医が教える集中力スイッチ
自律神経の名医が教える集中力スイッチ
小林弘幸
このプリン、いま食べるか? ガマンするか?
このプリン、いま食べるか? ガマンするか?
柿内尚文
まっすぐ考える
まっすぐ考える
桜田直美(訳)ダリウス・フォルー
夢を叶えるために脳はある
夢を叶えるために脳はある
池谷裕二
人生が整うマウンティング大全
人生が整うマウンティング大全
マウンティングポリス
レジの行列が早く進むのは、どっち!?
レジの行列が早く進むのは、どっち!?
サトウマイ
またうっかり、自分を後回しにするところだった
またうっかり、自分を後回しにするところだった
中村天風

同じカテゴリーの要約

ハーバード、スタンフォード、オックスフォード… 科学的に証明された すごい習慣大百科
ハーバード、スタンフォード、オックスフォード… 科学的に証明された すごい習慣大百科
堀田秀吾
悩まず、いい選択ができる人の頭の使い方
悩まず、いい選択ができる人の頭の使い方
小川仁志
なぜ、あの人との会話は嚙み合わないのか
なぜ、あの人との会話は嚙み合わないのか
米澤創一
1つの習慣
1つの習慣
横山直宏
精神科医が教える! 心がスッと軽くなる93の処方箋
精神科医が教える! 心がスッと軽くなる93の処方箋
樺沢紫苑
社会は、静かにあなたを「呪う」
社会は、静かにあなたを「呪う」
鈴木祐
DIGITAL STANCE スマホに支配されない生き方
DIGITAL STANCE スマホに支配されない生き方
ピョートル・フェリクス・グジバチ
不機嫌を飼いならそう
不機嫌を飼いならそう
藤野智哉
時間・自己・幻想
時間・自己・幻想
マルクス・ガブリエル大野和基(インタビュー・編)月谷真紀(訳)
不条理な世の中を、僕はこうして生きてきた。
不条理な世の中を、僕はこうして生きてきた。
宮下友彰
無料