夢を叶えるために脳はある

「私という現象」、高校生と脳を語り尽くす
未読
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「私という現象」、高校生と脳を語り尽くす
未読
夢を叶えるために脳はある
出版社
出版日
2024年03月26日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

脳は人間のすべてではない。だが、私たちの「人間らしさ」の多くを担っているのも、また脳であることに間違いはない。神経科学的に見れば、私たちの思考や感情は、すべて脳の発火である。神経細胞のナトリウムイオン・チャンネルの扉が、閉じたり開いたりしているだけである。だが脳を理解するためには、そうしたものの見方だけでは不十分だ。いわんや心をや。

本書の扱うトピックは、神経科学の領域のみならず、文学や哲学にまで及ぶ。そして鮮やかに、「脳」という物質と「心」という現象に関して、さまざまな事象や角度から考察を加え、その輪郭を明らかにしていく。その手腕はじつに巧みで、著者は脳の秘密を解き明かす科学者であると同時に、私たちの実存をさらけ出す哲学者といえるのかもしれない。

まさに気鋭の脳研究者である池谷裕二氏による、脳講義シリーズ完結編にふさわしい一冊である。過去の著作である『進化しすぎた脳』『単純な脳、複雑な「私」』もじつにスリリングであったが、本書を読んでいるときの興奮はそれを上回る。672ページの大著だが、高校生たちとのやりとりをベースにしていることや、著者のユーモアに富んだ語り口と親しみやすい表現により、読み始めると夢中になってしまう。読み通すと、『夢を叶えるために脳はある』というタイトルに込められた「意外な意味」が解明できるだろう。壮大な脳の旅を楽しんでいただきたい。

著者

池谷裕二(いけがや ゆうじ)
1970年、静岡県藤枝市生まれ。薬学博士。現在、東京大学薬学部教授。脳研究者。海馬の研究を通じ、脳の健康や老化について探究を続ける。文部科学大臣表彰(若手科学者賞)、日本学術振興会賞、日本学士院学術奨励賞などを受賞。「ERATO 池谷脳AI融合プロジェクト」の研究総括も務める。本書が完結編となる高校生への脳講義シリーズは、他に『進化しすぎた脳』『単純な脳、複雑な「私」』(ともに朝日出版社/講談社ブルーバックス)がある。その他の著書に『記憶力を強くする』(講談社ブルーバックス)、『脳には妙なクセがある』(扶桑社/新潮文庫)、『パパは脳科学者』(クレヨンハウス/扶桑社新書)など、共著に『海馬』(朝日出版社/新潮文庫)、『脳と人工知能をつないだら、人間の能力はどこまで拡張できるのか』(講談社)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    「なぜ意識があるか」は神経科学最大の謎の一つだが、「夢がもとになって現実の意識が生まれた」という仮説は文字通り夢のある仮説である。
  • 要点
    2
    ヒトの脳にとって効率的な学習方法は「困難学習」「地形学習」「交互学習」の3つである。これらの性質から、苦労したほうが学習効果は高いことがわかる。
  • 要点
    3
    私たちは、脳内の信号に注釈(アノテーション)をつけることで、世界を再構成する。その繰り返しの先に「世界」、そして「私」が生まれていく。

要約

脳は夢と現実を行き来する

夢を観察する
S-S-S/gettyimages

夢と現実の違いは、一見すると自明に映る。しかし、よくよく考えてみると、いま見ているものが「夢ではない」と証明するのはそれほど簡単ではない。

では、他人の夢ならどうか。その人が夢を見ているかどうかを判断するためには、寝ている人の脳の活動を記録すればいい。現在の科学の力をもってすれば、見ている夢の内容はある程度はわかる。

さらに、ネズミを使ったある実験では、より詳細な夢の内容を当てたと報告されている。海馬という脳部位には、「場所細胞」という神経細胞がある。読んで字のごとく、場所に応じて発火する細胞のことだ。実験ではこれを利用した。ネズミの脳にできるだけたくさんの電極を刺して、海馬細胞の発火を記録する。そして、ネズミに広いスペースを自由に探索させ、場所細胞の発火を観察したのだ。ネズミの場所細胞の発火さえ記録しておけば、夢のなかでどこにいるのかが記録できるようになるというわけである。

この実験ではさらに興味深いことが判明する。

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要約公開日 2024.06.08
Copyright © 2024 Flier Inc. All rights reserved.Copyright © 2024 池谷裕二 All Rights Reserved. 本文およびデータ等の著作権を含む知的所有権は池谷裕二、株式会社フライヤーに帰属し、事前に池谷裕二、株式会社フライヤーへの書面による承諾を得ることなく本資料の活用、およびその複製物に修正・加工することは堅く禁じられています。また、本資料およびその複製物を送信、複製および配布・譲渡することは堅く禁じられています。
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