生成AIの登場により、歴史的な転換点が「急速」に訪れている。生成AIサービスの代表格であるChatGPTは、本格ローンチからたった2カ月でMAU(1カ月あたりのアクティブユーザー数)が1億人を突破した。TikTokの9カ月、Instagramの30カ月と比較しても、一般の人々への浸透の速さは際立っている。
この急速な変化は、企業にも大きなインパクトを与えている。例えば、これまではソフトウェアサービスは既存の産業やサービスをディスラプト(破壊)する立場だったが、今や生成AIにディスラプトされる立場になっている。実際、Googleは自社の検索広告ビジネスが深刻なダメージを受ける可能性を危惧し、2022年末に社内に非常事態宣言を出した。
一方で、生成AI領域では評価額が10億ドルを超えるユニコーン企業が多数誕生している。その象徴的な企業の1つがSynthesiaだ。Synthesiaは、原稿を入力するとリアルな動作と発音で話すAIアバター動画が生成されるサービスで、既に5万社以上が導入している。
生成AIのインパクトは個人にも及んでいる。マッキンゼー・アンド・カンパニーのレポートでは、従業員の業務時間の約6〜7割が節約できる可能性があると報告している。また、ボストン コンサルティング グループのコンサルタント758人を対象とした実験では、AIを活用したコンサルタントは、活用しなかったコンサルタントに比べてタスクを平均25%早く完了し、40%高い品質のアウトプットを出したという。中でも注目すべきは、「ローパフォーマー」を含む全体が底上げされたことだ。これは、パフォーマンスの低い従業員でも、生成AIの手を借りれば大幅に改善できる可能性を示唆している。
個人にせよ企業にせよ、今後は生成AIの活用レベルが大きな差を生む時代になるだろう。
企業が生成AIを活用する場合、「生成AIネイティブな事業・プロダクトづくり」と「生成AIを使った生産性改善」の2つに分けられる。両方を同時に進められればいいが、経営層の理解が得られない、予算の確保ができず取り組めないといったことも起こりうる。
そうした企業には次のステップをお勧めする。まず、生成AI領域の社外の有識者に、勉強会を開いてもらうことだ。勉強会には、予算を動かす権限を持つ経営層にも参加してもらおう。著者もこの種のセミナーを何度も開催しているが、経営者のスタンスが大きく変わることを実感しているという。
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