本書の作文技術が対象にする文章は、あくまでも実用的なものであって文学的なものは扱わないことを前提としたい。言葉の芸術としての文学は、作文技術的センスと全く異なる次元にあるものである。「事実的」あるいは「実用的」な文章のための作文技術の目的は、「読む側にとってわかりやすい文章を書くこと」につきる。
著者の周囲にでさえ、著者には及ばぬような名文を書く人や、技術的に立派な文章を書く人がいる。そうした人をさしおいて、このような本を書くのは、むしろ著者は文章がヘタだからだという。
「名文」や「うまい文章」というのは一種の才能である。著者は就職して新聞記者になったが、名文を書く才能は自分にはないとあきらめた。しかし、これまで努力してきて、文章をわかりやすくすることはできるようになった。これは才能ではなく技術の問題だ。
技術である以上、「わかりやすい文章」はだれにでも学習可能なはずだ。「技術」としての作文を、これから論じていこう。
ここに一枚の紙があるとしよう。これを形容する修飾語を次に並べてみる。
白い紙
横線の引かれた紙
厚手の紙
ここで挙げた3つの修飾語をひとつにまとめて、「紙」という名詞にかかる修飾語を作るなら、どういう順番にすればいいだろうか。まず、挙げた順にただ並べてみるとこうなる。
白い横線の引かれた厚手の紙
これだと、「白い横線」の引かれた紙、つまり横線が白いと解釈できる。では、反対から並べるとどうなるだろうか。
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