いかなる時代環境でも利益を出す仕組み

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出版社
日本経済新聞出版

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出版日
2024年04月01日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

家電、寝具、インテリア、園芸用品、コメ、そしてマスク。これらはすべてアイリスオーヤマの製品だ。アイリスオーヤマほど型破りでありながら身近な会社は、なかなかない。なぜこうした会社が生まれたのか。

かつて同社はプラスチック製品の下請け加工メーカーだったが、ブロー成型の技術を活かして、自社ブランドの養殖用のブイや田植え用の育苗箱などを世に出した。その後、園芸業界にプラスチック製品を投入したとき、ホームセンターをメインの販売チャネルとしたところから、「メーカーベンダー」という独自の仕組みづくりへと歩み始める。その足跡を辿ると、アイリスオーヤマの一貫した思想が見えてくる。

メーカーでありながら問屋でもある。2万5000という膨大な製品点数がありながら、内製化にこだわる。工場の稼働率を7割以下にとどめる。いずれも一見非合理だから、他の会社は真似をしようとしない。そんなアイリスオーヤマはいまや、ネット通販を成功させ、北海道から佐賀県まで物流拠点を持ち、積極的に海外展開するほど飛躍を遂げている。経営学者の楠木建氏は「ほぼ完璧なストーリーとしての競争戦略」と本書序文で絶賛する。

アイリスオーヤマの仕組みは、長年、同社を率いてきた著者の大山健太郎氏がつくり上げた同社固有のものだが、その思想や戦略には、他の企業でも実践できる普遍的な学びがある。本書を読み通せば、同社がピンチを必ずチャンスにして成長を遂げてきた背景がありありとわかり、明日へのヒントが見つかるはずだ。

ライター画像
Keisuke Yasuda

著者

大山健太郎(おおやま けんたろう)
アイリスオーヤマ会長。1945年生まれ。大阪で父親が経営していたプラスチック加工の大山ブロー工業所(1991年にアイリスオーヤマに社名変更)を、父の死に伴って1964年、19歳で引き継ぐ。
経営者を60年間と長きにわたり務め、生活用品メーカーからLED照明・家電メーカーに業容拡大。
藍綬褒章受章(2009年5月)、
旭日重光章受章(2017年11月)。
2018年会長就任。

本書の要点

  • 要点
    1
    アイリスオーヤマは「ピンチが必ずチャンスになる経営」をしている。その結果、コロナショックや東日本大震災など、時代環境が危機にあるときに必ず業績を飛躍的に伸ばしている。
  • 要点
    2
    重視するのは、使う人の立場に立つ「ユーザーイン」の発想である。「買う人=使う人」とは限らず、使う人の立場に立てれば、新しい市場を創造できる。
  • 要点
    3
    問屋機能を持つ製造業「メーカーベンダー」という業態を確立したことで、ユーザーインがさらに強固になった。
  • 要点
    4
    稼働率7割以下にとどめるルールを徹底。その結果、急な需要の高まりにすぐさま対応できる「瞬発対応力」を維持している。

要約

環境を自ら変革する

ビジネスチャンス優先

2020年、新型コロナウイルスをきっかけに世界は大転換した。経済環境は以前の状態には戻らず、テレワークの浸透、巣ごもり消費の定着、インターネットでの買い物へのシフトが進んだ。会社のマネジメントにも、ニューノーマルが求められる。

そんななか、アイリスオーヤマ(以下、アイリス)の2020年12月期のグループ売上高は約7000億円となり、前期の5000億円から一気に2000億円ほども増えた。

アイリスには、あらゆる設備の稼働率を7割以下にとどめるというユニークなルールがある。何かの需要が急に出現したときには、予備スペースを活用して瞬時に増産ができる。コロナ禍での大増産を機に、マスクの出荷数で国内トップシェアに躍り出た。アイリスは「ピンチをチャンスにする経営」ではなく、「ピンチが必ずチャンスになる経営」の結果、危機のときに業績を伸ばしているのだ。

アイリスの企業理念第1条
Sezeryadigar/gettyimages

アイリスの経営の原点は1964年にある。アイリス会長である著者の父は大山ブロー工業所(後にアイリスオーヤマに改名)の創業者であるが、この年に他界し、著者は19歳で社長を継いだ。プラスチック製品の下請け加工工場の年商は500万円。注文にすべてイエスで対応することで取引先の信用を得て、技術力を磨いた。やがて「自社ブランドを世に送り出したい」という思いが強まっていく。

21歳のときに作った養殖用のブイが評判になった。次に開発したのは田植え用の育苗箱だ。木製からプラスチック製に変えることでヒット商品となる。需要に近いところで製品を供給できるよう、仙台に工場を新設した。そんなとき、著者の経営理論を決定づけるオイルショックが起きる。

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要約公開日 2024.06.23
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