2020年、新型コロナウイルスをきっかけに世界は大転換した。経済環境は以前の状態には戻らず、テレワークの浸透、巣ごもり消費の定着、インターネットでの買い物へのシフトが進んだ。会社のマネジメントにも、ニューノーマルが求められる。
そんななか、アイリスオーヤマ(以下、アイリス)の2020年12月期のグループ売上高は約7000億円となり、前期の5000億円から一気に2000億円ほども増えた。
アイリスには、あらゆる設備の稼働率を7割以下にとどめるというユニークなルールがある。何かの需要が急に出現したときには、予備スペースを活用して瞬時に増産ができる。コロナ禍での大増産を機に、マスクの出荷数で国内トップシェアに躍り出た。アイリスは「ピンチをチャンスにする経営」ではなく、「ピンチが必ずチャンスになる経営」の結果、危機のときに業績を伸ばしているのだ。
アイリスの経営の原点は1964年にある。アイリス会長である著者の父は大山ブロー工業所(後にアイリスオーヤマに改名)の創業者であるが、この年に他界し、著者は19歳で社長を継いだ。プラスチック製品の下請け加工工場の年商は500万円。注文にすべてイエスで対応することで取引先の信用を得て、技術力を磨いた。やがて「自社ブランドを世に送り出したい」という思いが強まっていく。
21歳のときに作った養殖用のブイが評判になった。次に開発したのは田植え用の育苗箱だ。木製からプラスチック製に変えることでヒット商品となる。需要に近いところで製品を供給できるよう、仙台に工場を新設した。そんなとき、著者の経営理論を決定づけるオイルショックが起きる。
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