クリティカル・ビジネス・パラダイム

社会運動とビジネスの交わるところ
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クリティカル・ビジネス・パラダイム
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クリティカル・ビジネス・パラダイム
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プレジデント社

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出版日
2024年04月29日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

日本企業はかつて、数多のイノベーションを起こし、世界中の社会のあり方に大きな影響を与えてきた。しかし、この数十年の間にイノベーションを生み出す力を失い、停滞している。

イノベーションの力を取り戻すためにはどうすれば良いのだろうか。その問題について考察し、新たな一歩を踏み出すうえで重要なパラダイムを余すことなく紹介したのが本書だ。

テスラやグーグル、アップルのように、21世紀に存在感を高めた企業には共通する特徴があるという。それが、本書が提示する、社会運動・社会批判としての「クリティカル・ビジネス・パラダイム」だ。顧客の要望に応えるのではなく、それを批判的に受け止めて、自らが思い描く社会のあるべき姿へと啓蒙する。また、自然環境保護をミッションに掲げるパタゴニアのように、ビジネス自体が社会運動としての性質を帯びることで、共感したステークホルダーの支持を集めていく。現代は、直接的な社会運動や政治活動よりも、企業活動の影響力のほうがはるかに大きい。社会を変えるためにはクリティカルな理念を掲げたビジネスを行うほうが効果的なのだ。

従来のビジネスの常識から大きく逸脱するパラダイムへと転換するためには、まずは自分自身の考え方を批判的に捉えていく必要がある。本書を通して、これまで当たり前と思っていた価値観に「クリティカル」な視点を持てるようになり、新たな扉が開かれることだろう。

ライター画像
大賀祐樹

著者

山口周(やまぐち しゅう)
1970年東京都生まれ。独立研究者、著作家、パブリックスピーカー。ライプニッツ代表。慶應義塾大学文学部哲学科、同大学院文学研究科美学美術史学専攻修士課程修了。電通、ボストンコンサルティンググループ等で戦略策定、文化政策、組織開発などに従事。『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社新書)でビジネス書大賞2018準大賞、HRアワード2018最優秀賞(書籍部門)を受賞。その他の著書に、『劣化するオッサン社会の処方箋』『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』『外資系コンサルの知的生産術』『グーグルに勝つ広告モデル』(岡本一郎名義)(以上、光文社新書)、『外資系コンサルのスライド作成術』(東洋経済新報社)、『知的戦闘力を高める独学の技法』『ニュータイプの時代』(ともにダイヤモンド社)、『武器になる哲学』(KADOKAWA)、『自由になるための技術 リベラルアーツ』(講談社)、『ビジネスの未来』(小社刊)など多数。神奈川県葉山町に在住。

本書の要点

  • 要点
    1
    クリティカル・ビジネス・パラダイムは、批判的な観点から社会における問題を新たに生成し、社会運動・社会批判としてのビジネスを通して社会のあるべき姿の実現を目指すものだ。このパラダイムの勃興によって、経済・社会・環境のトリレンマを解決する。
  • 要点
    2
    従来のビジネスでは、競争優位性と持続可能性を保てない。顧客の欲求に応えるのではなく、顧客を批判・啓蒙の対象として捉え、価値観をアップデートすることが重要となる。

要約

【必読ポイント!】 クリティカル・ビジネス・パラダイムとは?

社会運動・社会批判としてのビジネス
NiseriN/gettyimages

社会運動・社会批判としての側面を強く持つビジネスであるクリティカル・ビジネス。この新たなパラダイムの勃興によって、ビジネスは社会的意義を持ち、経済・社会・環境のトリレンマを解決できると著者はいう。

本書では、社会運動を「社会の変革や改善を目指し、一定の目標や価値観を共有する人々が組織的に行う活動や運動」とする。また、ビジネスを「顧客のニーズを満たす商品やサービスを提供し、収益を得る目的で行われる経済的な取引や活動」と定義している。

社会運動とビジネスという言葉は相性が悪いと感じる人もいるだろう。これまでの社会運動は、暴走する資本主義や貪欲な企業の商業主義への批判という側面が強かったため、両者は水と油のように思えるからだ。

しかし、歴史的に見れば、多くの社会変革がビジネスのイニシアチブによって始められている。たとえば、産業革命期に紡績工場オーナーだったロバート・オウエンが挙げられる。彼は労働者の福祉の向上が資本家の利益とも合致することを示すことで、労働法や社会福祉制度の整備に寄与した。現代社会でも、大きな存在感を示している企業の多くが、利益を追求するだけでなく、何らかの社会運動、社会批評としての側面を強く持っている。

本書では、こうしたビジネスを、クリティカル・ビジネス・パラダイムと呼ぶ。クリティカル・ビジネス・パラダイムが求められるのはなぜか。それは、従来のビジネスのパラダイムではもはや競争優位と持続性を保てないからである。

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要約公開日 2024.07.06
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