社会運動・社会批判としての側面を強く持つビジネスであるクリティカル・ビジネス。この新たなパラダイムの勃興によって、ビジネスは社会的意義を持ち、経済・社会・環境のトリレンマを解決できると著者はいう。
本書では、社会運動を「社会の変革や改善を目指し、一定の目標や価値観を共有する人々が組織的に行う活動や運動」とする。また、ビジネスを「顧客のニーズを満たす商品やサービスを提供し、収益を得る目的で行われる経済的な取引や活動」と定義している。
社会運動とビジネスという言葉は相性が悪いと感じる人もいるだろう。これまでの社会運動は、暴走する資本主義や貪欲な企業の商業主義への批判という側面が強かったため、両者は水と油のように思えるからだ。
しかし、歴史的に見れば、多くの社会変革がビジネスのイニシアチブによって始められている。たとえば、産業革命期に紡績工場オーナーだったロバート・オウエンが挙げられる。彼は労働者の福祉の向上が資本家の利益とも合致することを示すことで、労働法や社会福祉制度の整備に寄与した。現代社会でも、大きな存在感を示している企業の多くが、利益を追求するだけでなく、何らかの社会運動、社会批評としての側面を強く持っている。
本書では、こうしたビジネスを、クリティカル・ビジネス・パラダイムと呼ぶ。クリティカル・ビジネス・パラダイムが求められるのはなぜか。それは、従来のビジネスのパラダイムではもはや競争優位と持続性を保てないからである。
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