エレガントパズル

エンジニアのマネジメントという難問にあなたはどう立ち向かうのか
未読
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エンジニアのマネジメントという難問にあなたはどう立ち向かうのか
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出版社
出版日
2024年06月03日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

組織というものは厄介だ。構成する人員によってそのあり方はまったく違うように思える。数は増減し、ある日うまく機能していたように見えたチームが、別の日には散々な様子を見せることもある。「売上はすべてを癒す」というのはこの世の真理かもしれないが、「売上を出すためには組織が健全に機能しなければならない」というのも、これまたよくある話だ。

もしあなたがそんなふうに考える瞬間がこれまであったのならば、本書を一読する価値は間違いなくある。なぜなら本書は、まごうことなく「組織デザイン」の本だからである。副題に「エンジニアのマネジメント」という文言こそ入ってはいるが、ここに書かれていることは、多くの組織で応用できるだろう。それだけ、さまざまな状況や場面についての対応やマインドセットが記載されているからである。本書を読んでいると、不定形で解決策のないように思えた組織というものが、ある種の法則にもとづいた現象のように思えてくるから不思議だ。

組織はそれぞれ違う色やかたちを持っており、唯一の答えや解決策があるわけではない。一方で、そこには一定の原則があるのもたしかである。組織デザインに関心のあるのであれば、ぜひ本書を手にとってみてほしい。たとえあなたがエンジニアでなくても、だ。エンジニアのマネジャーであればなおさらである。

著者

ウィル・ラーソン (Will Larson)
米Yahoo!、米Digg、米SocialCode、米Uber、そして2016年以降は米Stripeなど、さまざまな形態や規模のテクノロジー企業でエンジニアリングリーダーやソフトウェアエンジニアとして働いてきた。ノースカロライナ州で育ち、ケンタッキー州のセンター・カレッジでコンピュータサイエンスを学び、JETプログラム(語学指導などを行う外国青年招致事業)を通じて日本で1年間、英語を教えた。2009年からはサンフランシスコ在住。現在は米CalmのCTO(最高技術責任者)を務める。『スタッフエンジニア マネジメントを超えるリーダーシップ』(日経BP、2023)の著者でもある。
本書は、大学卒業後から更新し続けているブログである「Irrational Exuberance!」の文章に基づく。ブログは現在も続いており、常に更新されている。
X:@lethain
www.lethain.com

本書の要点

  • 要点
    1
    組織デザインの基本は、チームのサイズを決めることであり、1人のマネジャーがサポートするエンジニアは6〜8人に限定すべきである。
  • 要点
    2
    エンジニアリーダーが、プロダクトマネジメントもしなければならないときがある。その際に用いるべきフレームワークは、「問題の発見」「問題の選択」「解決策の検証」である。
  • 要点
    3
    例外を一度認めると、組織の一貫性が失われる。行動の明確化に役立つポリシーを設け、それを遵守するべきだ。
  • 要点
    4
    無理難題に対して「ノー」を効果的に伝えるには、誰がどの段階を担当しているかを可視化することだ。そうすることで、改善提案を実効性のある領域にしぼり込める。

要約

組織:機能する組織を作る

「組織デザイン」のすすめ

うまくやれている組織には熱量がある。その一方で、そうではない組織は摩擦や不満、政治にまみれている。

その理由を理解しようとする試みが「組織デザイン」だ。そこには、「優れた組織は、単純なプロセスを一貫して適用し続けることで、成長できる」という考えがある。

組織デザインの基本は、チームのサイズを決めることだ。まず、1人のマネジャーがサポートするエンジニアは6〜8人に限定しよう。4人に満たないような小さいチームは、個人で動く場合と変わらず、しかもこわれやすい。1人いなくなるだけで、チームに大きな負の影響をもたらしてしまう。

逆に、そのチームが8人を超えてきたら、4人または5人で構成される2つのチームに分割するべきである。1人のマネジャーが9人以上をサポートする状態を、決してそのままにしてはならない。

もちろん、これは絶対的な原則ではなく、例外も存在する。とはいえ、基本的にはこのフレームワークを守るほうが、メリットは大きいと言える。

チームは段階的に成長する
成長するチームの4段階 (P.23 から引用)

チームの状態は、「遅延」「現状維持」「負債返済中」「革新」の4つのどれかに該当する。

「遅延」状態にあるチームは、ハードワークをしているのに望む成果に結びついておらず、士気が低い。「現状維持」チームは、技術的負債の解消に取り組めていないか、新規プロジェクトに取りかかれていない。「負債返済中」のチームは、技術的負債を返済することで、さらに時間が生まれている状態にある。最後に「革新」状態のチームは、技術的負債が少なく、メンバーの士気は高い。

理想としては、「遅延」から「革新」まで登りつめていくことだが、チームを放置していると、そのまま「遅延」に向かってしまう。そうならないためにはチーム状態に合わせて、異なる対策が求められる。

まず、チームが遅延しているときは、新たなメンバーを採用することだ。そのうえでユーザーのニーズを特定し、取り組みやすい目標を設定し、チーム内にポジティブな雰囲気をつくるべきである。社内の既存リソースを活用するのはおすすめできない。

次に、チームが現状維持のときは、より多くのことを達成できるようにチームの力を結集させるとともに、技術的負債を返済しはじめられるまで現在の仕事を減らすべきだ。

チームが負債返済中のときは、ゆとりを設けることで、システムを改善させよう。同時に、負債を返済しながらユーザーをサポートすることを心がけたほうがいい。技術的負債の返済のみだと、ユーザーからチームが見えなくなってしまう。

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要約公開日 2024.07.20
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