良いウェブサービスを支える「利用規約」の作り方 【改訂第3版】

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出版社
技術評論社

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出版日
2024年03月08日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

「ウェブサービスを始めようとしているエンジニアや経営者の方が、利用規約を中心とした法的なポイントを1冊でひととおりつかめ、そして自分自身で利用規約が作れる本にしたい」――というのが本書のねらいだ。

ウェブを介したスモールビジネスを始める個人が増えている昨今、避けては通れない利用規約やプライバシーポリシー、特定商取引法に基づく表示などについて、概要をわかりやすく説明し、詳細なひな形まで掲載している。

著者は、ITベンチャーに社内弁護士として参画した経験を持ち、ベンチャー・スタートアップ法務のプロフェッショナルである雨宮弁護士と、株式会社KADOKAWA法務部の片岡氏、弁護士ドットコム株式会社の新規事業企画担当で企業法務に明るい橋詰氏の3名である。企業法務の中でもスタートアップやベンチャーに特に見識の深い3名による本書は、実務経験を踏まえた、かゆいところに手が届く内容になっている。

新規事業の立ち上げを考えている方、現在行っている事業の利用規約等を見直したい方、サービスを構築する立場のエンジニアの方は、一読されることを強くおすすめする。自分の身を守る観点で、1ユーザーとして知っておきたい情報も満載だ。初版から11年が経ち、改訂第3版が発売されて最新の法改正を反映した内容になっている。この本は、ユーザーが“読みにくい”と感じることの多い利用規約に関するものであるだけに、非常にわかりやすく読み進めやすい一冊となっている。

ライター画像
鈴木えり

著者

雨宮美季(あめみや みき)
2001年弁護士登録。司法修習中から創業に関わっていたITベンチャーに社内弁護士として参画し、ECサイトの立ち上げなどに関わる。2002年6月にAZX Professionals Groupに入所。スタートアップをクライアントとする各種契約書、利用規約等のレビューおよび作成、ビジネススキームの適法性の検討などの経験を積み、2008年9月、パートナー就任。経済産業省 スタートアップ新市場創出タスクフォース構成員。
起業家・ベンチャー関係者向けに、利用規約、プライバシーポリシー、サービスの適法性などに関するセミナー・執筆などを数多く行っている。

片岡玄一(かたおか げんいち)
ブログ『企業法務について』管理人。SIer、移動体通信キャリア、スタートアップなどを経て、現在は株式会社KADOKAWAで法務を担当。
ウェブサービス事業会社をはじめとした複数の会社での法務経験やiOS・Windows向けアプリの開発経験を活かし、エンジニアと法務の架け橋になるべく日々鍛錬中。

橋詰卓司(はしづめ たくじ)
ブログ『企業法務マンサバイバル』管理人。衛星通信キャリア、人材サービス、アプリサービス業等を経て、現在は弁護士ドットコム株式会社で新規事業企画及び政策企画を担当。
著書として『ライセンス契約のすべて 実務応用編』(第一法規、共著)、『新アプリ法務ハンドブック』(日本加除出版、共著)、『ChatGPTの法律』(中央経済社、共著)等がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    ユーザーとトラブルになった際の話し合いにおいて基準となるものが利用規約である。ユーザーの共感と納得を得られるものを目指そう。
  • 要点
    2
    プライバシーポリシーとは、「個人情報」および「パーソナルデータ」の取扱い方針を定めた文書である。法令上の義務に対応する役割と、データの取扱い方針をユーザーに説明する役割がある。
  • 要点
    3
    販売ページが広告機能も有することとなるウェブサービスは、特定商取引法の規制を受ける。

要約

利用規約のホントのところ

読まれないのに、なぜ必要?
Ton Photograph/gettyimages

新しいウェブサービスを使い始める際、利用規約をきちんと読む人は少数だろう。それでもなお利用規約が必要となるのには、大きく2つの理由がある。1つは、「クレーム対応の際の話し合いの土俵を作っておくため」だ。障害やトラブルがクレームにつながったとき、利用規約はサポート担当者の“唯一の防具”になる。非常に多くのユーザーと対峙するウェブサービスだが、説明するための「文章」や「依って立つ基準」があれば、最小の人員とコストで運営することが可能となるのだ。

もう1つは、「法律で定められたデフォルトルールが不利に働かないようにするため」である。たとえば裁判管轄の条項を設定しておけば、何かあったときに自社から遠いところで訴訟手続きをするといった問題が発生しなくなる。

なお、利用規約を読まずに同意したとしても、ユーザーにとって一方的に不利となる理不尽な条項があった場合は、消費者契約法によって無効になることが多い。とはいえ自動的に守ってくれるわけではないので、法律に定める手続きに則って訴訟を起こさなくてはならない可能性は残る。

ともあれ、過度に事業者に有利な条件にせずバランスを取りながら、「法令上のデフォルトルールを消費者契約法等に反しないギリギリのラインで有利に変更するのが『賢いウェブサービス事業者』」だ。

利用規約の内容は、ユーザーの共感と納得を得られるものを目指したい。負担や制約を課す理由や背景を説明しつつ、その代わりに「このウェブサービスがどんなメリット・利便性・楽しさを提供するのか」を約束する。特に重要な事項については要約やQ&Aを掲載するなど、イメージしやすい記載を心がけるウェブサービス事業者も増えている。

プライバシーポリシーと特定商取引法

プライバシーポリシーの役割

プライバシーポリシーとは、特定のユーザー個人を識別できる「個人情報」と、位置情報のようにユーザーの行動・状態を示す「パーソナルデータ」の取扱い方針を定めた文書である。ウェブサービス事業者には個人情報保護法など各種法令に基づく通知・公表・同意取得の義務がある。また、「ユーザーに個人情報・パーソナルデータの取扱い方針をわかりやすく説明する」必要もある。そのためのツールがプライバシーポリシーだ。

プライバシーポリシーがその役目を果たすにはまず、個人情報保護法が定める「個人情報」の範囲を理解しなくてはならない。ポイントは「他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができる」ものを「個人情報」とする「容易照合性」である。電話番号やSNSのID単体では個人情報たり得なくても、ユーザーIDによって氏名と紐づけられることで個人情報とみなされるようになる。

Cookieや閲覧履歴なども個人情報と紐づけられる可能性が高いため、個人情報保護法によって保護される個人情報と区別して「パーソナルデータ」と呼ぶこともある。この「個人関連情報」についても、第三者が個人データとして取得する可能性がある場合は、あらかじめ本人の同意を得なければならない。

プライバシーポリシーの中で、「事業者ごとに記載内容が大きく異なり、細やかな文言の検討が必要となる項目」が「利用目的」だ。個人情報保護法もかなり具体的な特定を求めている。そして、外国を含む第三者への個人情報の提供、グループ企業などとの共同利用といったケースでは本人の「同意」が求められるし、宅配業者などの委託先への提供、パーソナルデータの外部送信においては少なくとも事前の通知または公表が必要となることは押さえておこう。保有する個人データの安全管理措置、開示請求の手続き等についても、ユーザーが「知り得る状態」にしておかなくてはならない。

特定商取引法に基づく表示
Dilok Klaisataporn/gettyimages

「特定商取引法に基づく表示」のページは、「通信販売に関する広告を行う際に表示すべき項目」として特定商取引法が指定している事項をまとめて表示することを目的としている。ウェブサービスでは「販売ページが広告の機能も自動的に持ってしまう」ため、「広告を行う際」に該当する。このページは「特定商取引法に基づく表示義務を果たしつつ」、「ウェブサービス事業者とユーザーの利便性を維持する」ためのツールといえる。

特定商取引法が具体的な表示を求めている事項は、たとえば次のようなものだ。

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要約公開日 2024.07.21
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