人口減少が進むと、足で稼ぐ従来型の営業は限界を迎える。担当エリア内の顧客密度が落ちて移動効率が悪くなるため、どうしても売上が減るからだ。成果を出したいなら、デジタルの力をうまく使い、営業活動の効率を上げる必要がある。
採用と育成も課題だ。大手企業ですら人材採用に苦労する中、中小企業が飛び抜けた営業力を持った人材を採用するのも、採用した人を優秀な営業人材へと育て上げるのも難しい。人手不足の中小企業が営業成果を上げるには、個人の能力に依存しない営業体制の構築を目指すべきだ。
営業活動の効率化と個人の能力に依存しない営業体制の構築。営業DXならこの2つを実現できる。特別優れた人材でなくても、デジタルを使って能力を底上げすれば、長時間労働をすることなく成果を上げられるのだ。
本書における「営業DX」の定義は次のとおりだ。
「データとデジタル技術の活用を前提として、営業部門の枠を超えて顧客接点を見直し、新規客獲得から既存客フォローまで一気通貫させるプロセスを構築することで、営業支援と省人化を実現し、営業生産性を高めること」
一般的な営業活動のプロセスは、マーケティング・見込み先獲得→リード育成・スコアリング→営業・商談・見込み管理→見積管理→受注・請求・回収→アフターフォローである。本書でもこの流れに沿って営業DXのしかたが解説されるが、要約ではこのうち「マーケティング・見込み先獲得」「リード育成・スコアリング」「営業・商談・見込み管理」を取り上げる。
まずは「マーケティング・見込み先獲得」のフェーズについて解説する。
新規の見込み客を発掘するためのマーケティング活動のことを「リードジェネレーション」と呼ぶ。将来の見込み客(リード)を取り込むための活動だ。
リードジェネレーションで見込み客を集めたら、次は「リードナーチャリング」と呼ばれる段階に移る。この段階では、見込み客の購買意欲を高めていく活動を行う。
さらに次の段階は「リードクオリフィケーション」だ。見込み客を購買可能性に基づいて「格付け」する。そして、契約に向けてクロージングを行う。
大手企業においては、マーケティング部門がこれらの一連の流れを担当し、営業部門のためにアポイントを取ってくれる。一方、中小企業にマーケティング部門はない。ならば、営業部門がマーケティング機能を併せ持ち、リードを獲得し、育てていく必要がある。
リードを作るための様々な活動をLCA(Lead Creation Approach)という。LCAの具体例としては、商品やサービスを紹介するWEBサイトの作成、情報発信のためのブログやSNS発信、メルマガ発行、展示会やセミナー企画立案、検索順位を上げるためのSEO、AR(拡張現実)の活用などが挙げられる。
LCAにおいては「コンテンツの力」が重要だ。商品名をアピールするだけではなく、人の心をつかむ、興味を喚起させるコンテンツが必要となる。
コンテンツづくりでは、次の4つの要素から考えるといいだろう。
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