営業活動において、お客様から出てくる「表面的なセリフ」と「裏側にある本音」にはギャップがある。このギャップを理解せず、表面的なセリフばかりに対応していると、いくら頑張っても成果は出ない。
たとえば、見積もり提案を出した後に「いかがでしょうか?」と判断を迫ったとき、お客様から「社内で検討しますのでお待ちください」と返されることがある。売れない営業はその言葉を真に受けてじっと待つ。
だが実は、「社内で検討しますのでお待ちください」という言葉の裏にあるのは、提案への不満だ。売れる営業なら、その言葉を聞くや否や、不満を解消するためのアクションを起こす。
お客様がよく口にする次のようなセリフは、とっさの防御反応によるものだ。
「とりあえず、今は忙しいです」
「とりあえず、もっと安くなりませんか」
「とりあえず、社内で検討しますのでお待ちください」
こうした「とっさの防御反応」を、本書では「購買者の仮面」と定義する。営業活動において営業担当者がまずすべきは、「購買者の仮面」を外すことだ。
「購買者の仮面」には5つのパターンがある。
1つ目は「はぐらかしの仮面」だ。ヒアリングされたことに対し、どこまで情報を出してよいか判断がつかないとき、「とりあえず、まだハッキリと決まっていなくて……」とはぐらかす。
2つ目は「忙しさの仮面」だ。「レベルの低い営業に時間を使いたくない」という心理から、「今は忙しいので、まずは資料をメールで送ってください」と言う。
3つ目は「いきなりの仮面」だ。複数の会社から急いで見積もりを取る必要があるとき、お客様は慌てて「今週中に提案をいただけませんか」というセリフを口にする。
4つ目は「とにかく安くの仮面」だ。まずは「安い価格」で最低限の安心を得ておきたいという心理から、「とりあえず、もっと安くなりませんか」と発言する。
5つ目は「検討しますの仮面」だ。返答を先延ばしにしたいという心理から、お客様は「とりあえず、もう少し社内で検討してみます」と言う。
本書では、5つの仮面について「ありがちなこと(=ローパフォーマーの行動)」と「仮面を外す方法(=ハイパフォーマーの行動)」が詳細に語られる。要約ではそのうち「はぐらかしの仮面」と「忙しさの仮面」を取り上げる。
お客様が「はぐらかしの仮面」をつけたくなるのは、営業から「意思決定に関わるデリケートな情報」について尋ねられたときだ。代表的なものはBANTCH(バントチャンネル)である。これはBudget(予算)、Authority(決裁者/意思決定にかかわる重要人物)、Needs(ニーズの詳細)、Timeframe(検討スケジュール)、Competitor(競合)、Human Resources(社内の組織体制)の頭文字を取ったものだ。
よく誤解されることだが、デリケートな情報が聞き出せないのは、お客様との関係構築ができていないからではない。お客様は、不要な商品を買いたくない、焦って不適切な金額で購入するのを避けたいという思いから「はぐらかしの仮面」をつけるのである。
「はぐらかしの仮面」を外すためには、ちょっとした枕詞によって、お客様に「小さな言い訳」を用意するのが有効だ。そのやり方には5種類ある。
(1)お客様に「メリット」を作る(メリットがあるなら話してもいいかな)
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