報道、トヨタで学んだ伝えるために大切なこと
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報道、トヨタで学んだ伝えるために大切なこと
出版社
出版日
2024年08月26日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

「伝える力がある人は、望む結果を得ることができる」。本書のこの言葉が胸に刺さった。たしかに、自分一人で実現できることは少なく、範囲も限定的なことが多い。何かを成し遂げるためには、人の協力を得たり、人を動かしたりするシーンが発生する。だからこそ、相手の共感を生む、相手に気づきを与える、相手の行動を変える……など、「伝える力」は望む結果を得るためのベーシックスキルといえる。そして、伝える力はいかに相手の目線に立てるかに左右されるのではないか――。そんな考えを後押ししてくれたのが本書だ。

著者の富川悠太氏は、テレビ朝日の報道番組『報道ステーション』のフィールドリポーターやキャスターを経て、現在はトヨタ自動車の専属ジャーナリストとして活躍している。もともとコミュニケーションが得意だと思いきや、昔は人見知りだったというから驚きだ。テレビ朝日入社後に就いたフィールドリポーターという「ザ・報道の仕事」に、当初は気乗りしなかったという。しかし、試行錯誤の結果、自分なりの解決策を発見していった。その「伝える力」を発揮するための聞き方、話し方、リサーチ、表現などの極意が、本書にちりばめられている。富川氏が大事にしてきた「リアルを伝える」ための工夫は、日常生活でも応用できるものが実に多い。

なぜ人は富川氏に心を開くのか。その理由がありありとわかるだろう。「伝える力」を磨き、応援してくれる人を増やしたい方にぜひお読みいただきたい。

ライター画像
松尾美里

著者

富川悠太(とみかわ ゆうた)
トヨタ自動車のオウンドメディア「トヨタイムズニュース」キャスター。「トヨタイムズ」では、外部への発信のみならず、約38万人の社員(連結子会社含む)に、豊田章男会長の思いを伝えることを目的としている。1976年、愛知県名古屋市生まれ。東京都立国立高等学校、横浜国立大学教育学部小学校教員養成課程体育専攻を卒業。1999年4 月、テレビ朝日に入社。2014年12月には、同年8月に筋萎縮性側索硬化症(ALS)で亡くなったいとこの富川睦美さんを取り上げた『笑顔の約束~難病ALSを生きる~』に出演。同番組は2015年11 月に日本民間放送連盟のテレビ教養番組部門で優秀賞を受賞。2016年4 月11日に古舘伊知郎氏の後任として『報道ステーション』のメインキャスターに就任。2022年3月末、テレビ朝日を退社。同年4月1 日、トヨタ自動車に入社。同年12 月、「トヨタイムズニュース」キャスター就任。プロデューサーも務め、「先人たちの想い」や「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」、「マルチパスウェイで目指す脱炭素社会」など、トヨタの「過去・現在・未来」を伝えている。
トヨタイムズ(toyotatimes.jp)

本書の要点

  • 要点
    1
    「相手の視点に立つ」ことと「第三者的視点で自分を見る」ことで、本当に伝わりやすい表現ができているかどうかがわかる。
  • 要点
    2
    相手の目線で、役に立てることを探しているうちに、相手は心の扉を開いてくれる。
  • 要点
    3
    言葉の力を磨くには、良い言葉に向き合い、言葉のストックを増やすことが大事だ。
  • 要点
    4
    相手を巻き込む必要があるときは、相手にも関係する「大きな目的」を伝えるとよい。

要約

相手の視点に立った聞き方・話し方

伝わる話し方と、聞き取りやすい話し方は違う

伝わる話し方とはどのようなものか。著者は、「相手の視点に立つ」ことと「第三者的視点で自分を見る」ことで、本当に伝わりやすい表現ができているかがわかるという。

ハキハキと流ちょうに話せば伝わりやすいと思うかもしれない。だが、「聞き取りやすい」と「伝わりやすい」は違う。聞き取りやすい話し方に意識を向けすぎると、かえって聞き手の印象に残りにくいこともある。それは、聞き手が自分ごととして思えず、臨場感を持てないからだろう。

大事なのは、話し方より「視点」を意識することだ。まず、取材の際など「現場と一体化する」とき、自分の視点は現場の視点になる。現場で起きた事件、災害などの当事者に近い視点で物事を見る。つづいて、視聴者の視点になり、視聴者が「知りたいこと」をもとに伝え方を考える。そのうえで、実際に伝える際には、現場と自分と視聴者とを含めた全体を見る視点に立ってみる。現場中継なら、現場で自分が話す様子を離れた場所から見るようなイメージだ。

話し手が話の内容に入り込むと、現場のニュースが話し手にとっての自分ごとになる。そのため、説得力のある「自分の言葉」で話せるようになり、結果的に相手に伝わりやすくなるのだ。

「上がり込みの達人」といわれるまでに
Mihajlo Maricic/gettyimages

人気報道番組のリポーターになった著者は、事件や事故の現場に行って取材をすることになった。当初は土足で上がり込むような気がして、インタビューをするのは気が重かったという。

それが変化したのは、2004年の新潟県中越地震のときだ。現地へ赴いた著者の前には惨状が広がっていた。建物は倒壊し、土砂崩れも起きて、家に帰れない人がたくさんいる。著者は、取材よりもお手伝いが先だと思い、瓦礫の片づけを手伝った。すると、一緒に作業をしている現地の人が、自然と話してくれた。相手の立場に立って役に立つことを探し、一緒に作業する中で自然に出てくるものを拾う。こうした取材の仕方のほうが、質問して答えてもらおうとするより、はるかにリアルな話を聞けたのだ。

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要約公開日 2024.09.03
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