イーロン・マスクを超える男 サム・アルトマン

なぜ、わずか7年で奇跡の対話型AIを開発できたのか
未読
イーロン・マスクを超える男 サム・アルトマン
イーロン・マスクを超える男 サム・アルトマン
なぜ、わずか7年で奇跡の対話型AIを開発できたのか
未読
イーロン・マスクを超える男 サム・アルトマン
出版社
朝日新聞出版

出版社ページへ

出版日
2024年07月19日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
要約全文を読むには
会員登録・ログインが必要です
本の購入はこちら
書籍情報を見る
本の購入はこちら
おすすめポイント

「サム、君はアウトだ。クビになるんだ」

ときは2023年11月17日。OpenAIのサム・アルトマンCEOはビデオ会議の取締役会で、突如こう告げられた。解任の理由は、「取締役との意思疎通において、彼は常に率直ではなかったから」などと抽象論に終始した。そしてわずか4日後に、アルトマンはOpenAIのCEOに返り咲くこととなる。ChatGPTの世界的躍進の裏で、なぜ、こんな社内クーデターが起きたのか――。

本書は、OpenAIを中心に、マイクロソフトやグーグルなどのキープレイヤーが織りなす企業ドラマを描いた一冊である。著者は、米国の主要メディアに公開された情報を丹念に調べあげ、OpenAIの正体に迫っていく。ChatGPTの開発秘話、アルトマン解任劇の舞台裏、著作権をめぐる問題、AGI誕生後の未来など、生成AIを取り巻く動向を一望することができる大充実の内容だ。

要約者が興味深く感じたのは、OpenAIの研究開発をリードしたイリア・スツケヴァーの存在である。トランスフォーマー技術の重要性をいち早く見抜く慧眼と高い技術力を持ちながら、ある種の「人間的な弱さ・妬み」を垣間見せている(彼はその後同社を離れ、新会社を設立した)。アルトマンやイーロン・マスク、サティア・ナデラなど、個性豊かな天才たちが繰り広げる人間ドラマにも注目したい。

生成AIの真の勝者は誰か。アルトマンが思い描く未来とはどのようなものなのか。手に汗握る覇権争いのリアルをお楽しみいただきたい。

ライター画像
松尾美里

著者

小林雅一(こばやし まさかず)
KDDI総合研究所リサーチフェロー。情報セキュリティ大学院大学客員准教授。
東京大学理学部物理学科卒業、同大学院理学系研究科を修了後、雑誌記者などを経てボストン大学に留学、マスコミ論を専攻。ニューヨークで新聞社勤務、慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所などで教鞭を執った後、現職。著書に『クラウドからAIへ――アップル、グーグル、フェイスブックの次なる主戦場』(朝日新書)、『AIの衝撃――人工知能は人類の敵か』(講談社現代新書)、『生成AI――「ChatGPT」を支える技術はどのようにビジネスを変え、人間の創造性を揺るがすのか?』(ダイヤモンド社)など多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    アルトマンは人類全体に寄与する安全なAGIの実現をめざし、マスクとともにOpenAIを立ち上げた。その後マスクの離脱、マイクロソフトからの巨額出資を経て、大規模言語モデルの開発を加速させた。
  • 要点
    2
    ライバルの動向を意識したOpenAI首脳陣は、2022年11月に急ごしらえのChatGPTを世に出し、これが世界的大ヒット商品となった。
  • 要点
    3
    OpenAIはアルトマン解任騒動を乗り越えたものの、著作権問題など外部からの圧力にもさらされている。

要約

OpenAIの誕生

起業、そしてYコンビネータの社長就任

サム・アルトマンがコンピュータと出合ったのは8歳の誕生日である。SFに夢中だった彼は、いつかコンピュータが自分で考えるようになると直感した。

2003年、アルトマンはスタンフォード大学に入学し、コンピュータ科学を専攻する。インターネット・ブームに乗って、ループトというスタートアップを立ち上げた。起業時には、シード・アクセラレータのYコンビネータの面接に合格した。アルトマンは2012年にループトを売却し、個人的に500万ドルを手にした。2014年には28歳でYコンビネータの社長に就任へ。その後、事業支援を通じて、リード・ホフマンやピーター・ティールなど、数々の起業家・投資家と緊密なコネクションを築き上げていく。

AGIの実現に乗り出す
Vertigo3d/gettyimages

2015年、30歳を目前にしたアルトマンは新しい挑戦を求めた。子供の頃からの夢である「人間のように考えるマシン」、すなわちAGIこそ自ら実現すべきだと思い至ったのだ。AGIとは、人類と同様かそれを凌ぐほどの汎用的な知能を備えたスーパーAIのことだ。ちょうどAIの研究開発が長い冬を終え、この分野の研究開発に巨額の資金が流れ込んでいた。

もっと見る
この続きを見るには...
残り4798/5310文字

3,400冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2024.09.15
Copyright © 2024 Flier Inc. All rights reserved.Copyright © 2024 小林雅一 All Rights Reserved. 本文およびデータ等の著作権を含む知的所有権は小林雅一 、株式会社フライヤーに帰属し、事前に小林雅一、株式会社フライヤーへの書面による承 諾を得ることなく本資料の活用、およびその複製物に修正・加工することは堅く禁じられています。また、本資料およびその複製物を送信、複製およ び配布・譲渡することは堅く禁じられています。
一緒に読まれている要約
BIG THINGS
BIG THINGS
櫻井祐子(訳)ダン・ガードナーベント・フリウビヤ
未読
「カルチャー」を経営のど真ん中に据える
「カルチャー」を経営のど真ん中に据える
遠藤功
未読
フローとストック
フローとストック
細谷功
未読
進撃のドンキ
進撃のドンキ
酒井大輔
未読
経営を教える会社の経営
経営を教える会社の経営
グロービス内田圭亮(執筆)
未読
企業変革のジレンマ
企業変革のジレンマ
宇田川元一
未読
成功の法則100ヶ条
成功の法則100ヶ条
三木谷浩史
未読
AIが答えを出せない 問いの設定力
AIが答えを出せない 問いの設定力
鳥潟幸志
未読