企業変革のジレンマ

「構造的無能化」はなぜ起きるのか
未読
企業変革のジレンマ
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「構造的無能化」はなぜ起きるのか
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企業変革のジレンマ
出版社
日本経済新聞出版

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出版日
2024年06月21日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

「企業変革」という言葉を聞いて、思い浮かべるものは何だろうか。ある種のドラマのような、劇的で急激な変化を想像する人もいるかもしれない。だが、本書で語られる企業変革は違う。それは地道で時間のかかるやり方である。しかし、変化が起きればその組織により本質的によい効果をもたらしてくれる――そう思える内容だ。そして、その中心にあるのが「対話」である。このスタンスは前々作である『他者と働く―― 「わかりあえなさ」から始める組織論』から一貫しており、そこには著者のたしかな理論と思想が感じられる。

組織の生態はとかく複雑だ。急激な社会変化のもと、いま何が起きているのか、何が問題なのかがわからなくなる。だから前に進めなくなり、自分たちで変化することを諦めてしまう。しかし、絡まった糸を丁寧に解きほぐしていけば、きっと進むべき道は見えてくる。著者は、企業変革が直面する問題のメカニズムの本質に迫り、行き詰まりを打開する道筋を示していく。

対話とは、「1on1を設定する」といったものではない。著者は真の対話に必要なものをこう述べている。「意味の押しつけをせず、実行部門の人々の世界を知ろうと努め、彼らの言語(ナラティヴ)で、自分たちが進めようとしている施策を捉え直すこと」。その意味と意義を、本書から汲み取っていただければと願う。経営層・ミドル層・メンバー層を問わず、組織を少しでもよくしたいと考える方にとって、本書は希望の書であるにちがいない。

著者

宇田川元一(うだがわ もとかず)
経営学者。埼玉大学 経済経営系大学院 准教授
1977年、東京都生まれ。立教大学経済学部卒業後、同大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。明治大学大学院経営学研究科博士後期課程単位取得。早稲田大学アジア太平洋研究センター助手、長崎大学経済学部講師・准教授、西南学院大学商学部准教授を経て、2016年より埼玉大学大学院人文社会科学研究科(通称:経済経営系大学院)准教授。専門は、経営戦略論、組織論。
対話を基盤とした企業変革について研究を行っている。また、大手企業やスタートアップ企業における企業変革やイノベーションの推進に関するアドバイザーとして、その変革を支援している。
主な著書に『他者と働く――「わかりあえなさ」から始める組織論』(NewsPicksパブリッシング)、『組織が変わる――行き詰まりから一歩抜け出す対話の方法2on2』(ダイヤモンド社)がある。
2007年度経営学史学会賞(論文部門奨励賞)
日本の人事部「HRアワード2020」書籍部門最優秀賞受賞(『他者と働く』)

本書の要点

  • 要点
    1
    長期的な企業変革に向けては、(1)全社戦略を考えられるようになる、(2)全社戦略へのコンセンサスを形成する、(3)部門内での変革を推進する、(4)全社戦略・変革施策をアップデートする、という4つのプロセスを実践していくべきだ。
  • 要点
    2
    組織は一度環境に適応すると、効率化のために分業化と仕事のルーティン化を進めるため、構造的に無能化するものである。
  • 要点
    3
    組織としての能力が低下したとき、乗り越えるべき壁は「多義性」「複雑性」「自発性」の3つだ。3つの壁を解きほぐす糸口になるのが対話である。

要約

企業変革に必要な4つのプロセス

企業変革とは「V字回復」ではない

「変革」と聞くと、V字回復のように、経営危機に陥った企業の再生をイメージする人が多いかもしれない。しかし、こうした短期的な変革は、「企業再生」や「事業再生」と呼ぶべきものだ。

一方で、本書での企業変革とは、環境変化への適応力を構築していく取り組みである。1〜2年で明確な成果が出ることはほぼなく、場合によっては10年以上かかるかもしれない。だが継続することにこそ意味がある。

長期的な変革に必要なのは、次の4つのプロセスを円滑に実践することである。すなわち、(1)全社戦略を考えられるようになること、(2)全社戦略へのコンセンサスを形成すること、(3)部門内での変革を推進すること、(4)全社戦略・変革施策をアップデートすることだ。ただし、必ずしもこの順番通りに進める必要はなく、各プロセスを往還する中で、組織全体に徐々に変化が生じていけばよい。順に詳細を見ていく。

(1)全社戦略を考えられるようになる
fizkes/gettyimages

全社戦略とは、自社の将来的な成長の方向性とその実現のための道筋を全社的に示したものだ。この全社戦略が明確に存在している企業は少ない。

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要約公開日 2024.09.23
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