経営戦略全史

未読
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経営戦略全史
出版社
ディスカヴァー・トゥエンティワン
出版日
2013年04月28日
評点
総合
4.7
明瞭性
5.0
革新性
4.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

本書(経営戦略全史)は、第一線の経営コンサルタントとして約20年間活躍し、現在は大学院の教授も務める三谷宏治氏が放つ経営戦略100年の歴史の総まとめだ。ビジネス書大賞2014の大賞、ハーバード・ビジネス・レビュー読者が選ぶベスト経営書2013第一位の2冠を達成するなど、出版後の反響の大きさは驚くべきものである。2013年に出版された書籍のうち、どれか1冊だけをお薦めするのであれば、私は迷うことなく本書を選びたい。

ここで語られるのは、経営戦略に関わる人であれば聞いたことがあるだろう90余りの戦略コンセプト。そのどれを取っても興味深く、経営の実務に携わる方にとって示唆が富んでいるものばかりである。本格的な内容を扱い432ページにも及ぶ広大な知の旅を提供しているにも関わらず、経営学者間の仮想の会話や、馴染みのある企業事例、経営コンサルティングの流派の争いなどがふんだんに取り入れられ、極めて読みやすく気付けば最終ページに到達していることだろう。

本書は辞書的にも使うことができるとも紹介されているが、1ページ目から流れを追って読むことが正しい読み方だ。その中で知の巨人たちの主張と問題点、次の戦略コンセプト誕生の背景など、歴史の流れが奏でる美しい調べを味わうことをお薦めしたい。本書は、経営に携わっている方やこれからそのようなポジションを目指す方、経営コンサルタント、経営学を学ぶ学生など、ビジネスに興味がある方は全て読むべき必読本だ。

ライター画像
大賀康史

著者

三谷 宏治
1964年大阪生れ、福井で育つ。永平寺町立吉野小学校、松岡中学校、藤島高校、駿台予備校を経て東京大学理科Ⅰ類へ。同 理学部物理学科卒業後、ボストン コンサルティング グループ(BCG)、アクセンチュアで19年半、経営コンサルタントとして働く。92年 INSEAD MBA修了。2003年から06年 アクセンチュア 戦略グループ統括 エグゼクティブ・パートナー。2006年からは特に子どもたちを対象にした教育活動に専念。現在は大学教授、著述家、講義・講演者として全国をとびまわる。妻、3人娘と東京・世田谷区在住。K.I.T.虎ノ門大学院 主任教授、早稲田大学ビジネススクール 客員教授、グロービス経営大学院 客員教授。放課後NPOアフタースクール 理事、NPO法人3keys理事。永平寺ふるさと大使。

本書の要点

  • 要点
    1
    経営学の歴史は、「科学的管理」を説いたテイラーに始まり、「人間関係論」を語るメイヨーによりソフト面が持つ複雑で深遠なものに対峙していくことになる。
  • 要点
    2
    ドラッカー、アンゾフ、コトラ―などの知の巨人たちが近代マネジメントを創成し、後の世で出される主要なコンセプトの原型を形作った。
  • 要点
    3
    その後、ポーター等によるポジショニング派、ピーターズ等によるケイパビリティ派の対立があるも、どちらが正解とも言えないとする、ミンツバーグの「コンフィギュレーション」に結び付く。
  • 要点
    4
    21世紀に入り、素早く実行し、素早く修正する考え方を中心とする「リーン・スタートアップ」および「アダプティブ戦略」が評価を得ている。

要約

はじめに

本書の内容

本書では20世紀と21世紀初頭における経営戦略の歴史について俯瞰的に語られるとともに、主要なコンセプトが紹介されており、この1冊で経営戦略の教養を身に付けられる大書である。

その歴史をたどれば、ポジショニング派とケイパビリティ派の対立も、各種の経営分析フレームワークの源流も、直近の主要な考え方も全て味わうことができる。

それらを学ぶ動機は、経営学を学ぶ教科書でも、辞書や百科事典でも、物語として流れを追うことでも良いだろう。それでは順に経営戦略という広大で最高の知の旅を楽しもうではないか。

近代マネジメントの源流

oksix/iStock/Thinkstock
テイラーの「科学的管理法」

経営戦略を語る上では、およそ100年前の世界を生きた、フレデリック・テイラーを欠かすことはできない。テイラーはハーバード大学を目を悪くして退学し、見習い工としてキャリアをスタートする境遇を辿った後、メキメキと頭角を現す。

生産現場の課題に直面する中で、目分量だった管理から科学的な管理への必要性を痛感する。ベスレヘム・スチールでのショベル作業の研究において、ショベル1杯当りの分量、ショベルを差し込む速さや高さ、投げる時間などを最適化していく。

その結果、1人当たり作業量を3.7倍に、1人当たり賃金を63%改善する。即ち、生産量当りのコストを56%も削減する効果をもたらしたのだ。

そのような分析の集大成としてテイラーが55歳の時にまとめた書が、「科学的管理法の原理」である。そこでは①課業管理、②作業研究、③指図票制度、④段階的賃金制度、⑤職能別組織の5つをもって科学的管理法を説いている。

その効果は目覚ましかった一方で、「計画・管理と現場を分離して労使対立を激化させた」などの批判も浴びることになる。そして10年後に人間性重視を謳うメイヨーが登場する。

メイヨーによる「社会的存在としての人間」とは

メイヨーは1880年、オーストラリアのアデレードで医師の子として生まれ、31歳からは教員となる。その後42歳にウォートン・スクールに移り、著名な「ミュール実験」を行う。

その内容は次のようなものだ。年250%にも及ぶ紡績部門の離職率の低減を目指し、作業環境改革を行う。彼はその原因を仕事の「単純さ」「孤独さ」からの精神的疲労にあると考え、1日4回10分ずつの休憩を導入する。その効果は目覚ましく、離職率がなんと年5%に急減する。しかし本当に休憩だけが効果を及ぼしたのだろうか。

次に電話機製造会社において、「作業効率は照明が暗くなるほど上がる」と言われていた要因を探る。チームの生産性は、照明を明るくしても、暗くしてもどんどん上がっていた。更に2万人の従業員に面談調査を行った。あまりに膨大な量だったので、面接法は自由に会話する形式となった。その結果、面接をしただけで生産性が向上している事実に直面する。

つまり、人の生産性は経済的対価の良し悪しだけでなく、社会的欲求の充足を重視するもので、感情や人間関係に大きく左右されるという結論を得るのである。これ以降、経営学の歴史において生産性向上というテーマは、人の感情というまことに複雑で深遠なものに対峙していくことになる。

近代マネジメントの創成

Top Photo Group/Top Photo Group/Thinkstock
ドラッカーは「マネジメント」の有用性を広めた伝道師

本書を読まれる方はドラッカーの名は聞いたことがあるに違いない。日本でもダイヤモンド社からの書籍だけで累計400万部以上読まれているのだから。ドラッカーは正に「近代マネジメントの伝道師」であると言える。

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要約公開日 2014.05.07
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