この章では、以下4点について語られている。
一つ目は、そもそも経営戦略とはなにかという点だ。経営戦略とは、企業が「目的(継続的な事業を営む、成長する、収益を獲得・拡大する等)」を達成するために必要となる打ち手(手段よりも上位の概念)を指している。
二つ目は、経営戦略の目標と打ち手は4層に分かれる、という点だ。企業経営は「基本理念」「ビジョン」「経営戦略」「施策(戦術)」の4階層に分かれており、それぞれが「目標」と「打ち手」の関係性となっている。つまり、ビジョンを達成するために経営戦略が存在し、経営戦略を達成するために施策があるのだ。上位ほど中長期的/抽象的な概念となる。企業理念やビジョンが一体どのような粒度で設定されているものなのかについては、実際の企業の例をホームページ等で確認することが有用であろう。
三つめは、対象範囲によってとるべき戦略は変わる、という点である。企業内の複数の事業について、どのように資源配分をし、打ち手を実施するか(全社戦略)、特定事業において、どのように資源配分をし、打ち手を実施するか(事業戦略)、事業遂行上の個別機能において、どのように打ち手を実施するか(機能別戦略)、という3つの範囲が存在する。本書は特に全社戦略と事業戦略について解説しているものである。
四つ目は、特徴と限界を知り、最適なアプローチを選択する、という点だ。経営学において、経営戦略は計画的に前もって策定されるものか、それとも創発的(結果的に形成されるものか)という論点が存在する。本書では計画的アプローチを2~5章、創発的を6章で紹介している。臨機応変にアプローチを使い分けることが肝要である。
経営戦略を策定するポイントは大きく3つ存在している。
一つ目のポイントは、「いかにして持続的に競合優位性を構築するか」、である。企業には必ず競合が存在する。自社が収益を獲得するためには、何らかのポイントで競合に勝っている必要がある。
二つ目のポイントは、「いかにして打ち手に対し優先順位(メリハリ)をつけるか」、である。打ち手に投下できる経営資源・時間は有限であるため、なんでもかんでも実施することはできない。これは「選択と集中」の概念にも通じるところがある。
三つ目のポイントは、「全体の整合性をとること」、である。打ち手はそれぞれがバラバラであっては効力を発揮できない。1章でも述べたように、4つの階層で経営戦略・事業戦略を俯瞰的にとらえ、それらの整合性を保つ必要がある。
経営戦略を策定する際には、「①環境分析」、「②ドメイン(事業領域)設定」、「③戦略策定」という3つのステップを踏む。それぞれのプロセスには過去の知見、研究から得られた戦略論の定石(セオリー)が存在している。こうした定石は戦略策定において非常に有効な情報だろう。また戦略策定においては、ベースとなる思考方法としての「ロジカルシンキング」を身につけておくことも肝要である。
本書においては、定石が多数解説されているが、そういった定石(フレームワークと呼ばれるもの)は広く認知されている情報なので本ハイライトでは割愛する。これまでフレームワークにあまり触れてこなかった方は、本書を是非参考にしていただきたい。ただし、著者が語っていることでもあるが、「フレームワークに当てはめれば経営戦略が完成する」ということではない。フレームワークありきの思考ではなく、補助線としてうまく使う程度の感覚を持っておくのが肝要だろう。
「戦略は描いたが、いざ実行に移すとうまくいかない」、というのが現場におけるリアルな悩みではないだろうか。本書では、そういった問題の具体的な解決策も示されている。それが本章の位置付けである。
そもそも戦略が絵に描いた餅となってしまう理由は、
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