一、アメリカの経営学者はドラッカーを読まない
「経営学の父」と呼ばれるピーター・ドラッカーの書籍は、日本の書店のビジネス書コーナーに行くと、ところ狭しと並んでいる。一方でアメリカでは研究のためにドラッカーの本を読むことも議論することもない。なぜならドラッカーは「学問としての経営学の本」とは認識されず、「名言ではあっても、科学ではない」と考えられているからだ。
二、ハーバード・ビジネス・レビュー(HBR)は学術誌ではない
HBRを学術誌と認識している人が多いが、けっしてそうではない。HBRの論文には、学者が紹介する経営分析の新しいツールや最新の企業戦略の動向などは語られているが、それらの科学的な分析の仔細が報告されている訳ではないからだ。
三、よい授業をしても出世などできない
アメリカの大学はアシスタント・プロフェッサー、アソシエイト・プロフェッサー、フル・プロフェッサーの三段階制である。上のポジションに昇格するために決定的に重要なのは、「上位ランクの学術誌」に何本論文を載せたかであり、学生からのティーチングの評価は「教授全体の平均ぐらいか、あるいは多少下でもかまわない」といった程度である。
「アメリカの大学の博士課程で一般的に使われている、経営学の理論を網羅した教科書を教えてほしい」とよく聞かれるが、そのようなものはない。少なくとも、経営戦略論、組織論、国際経営論などの分野において、研究者向けの代表的な教科書は存在しない。
経営学は大まかにはマクロ分野とミクロ分野に分かれる。マクロ分野では、企業を一つの単位としてとらえ、その行動や他企業との競争関係、協調関係、組織構造のあり方などが研究トピックとなる。例えば、経営戦略論、(マクロ)組織論、それらの横断領域として、国際経営論、アントレプレナーシップ論、技術経営論などが含まれる。
ミクロ分野は、企業内部の組織設計や人間関係を分析する研究領域で、「組織行動論」と呼ばれる。例えば、チーム・グループ行動、リーダーシップ、人的資源管理などが含まれる。
① 経済学ディシプリン
この流派の研究者は、経済学の中でも産業組織論や組織の経済学といわれる分野に基礎をおくことが多い。大雑把に言えば、「人は本質的に合理的な選択をするものである」という仮定がおかれている。有名なハーバード大学のマイケル・ポーター教授はこのカテゴリーに入る。
② 認知心理学ディシプリン
この流派は、古典的な経済学が想定するほどには人や組織は情報を処理する能力がなく、それが組織の行動にも影響を及ぼしている、という考えを出発点にしている。認知心理学ディシプリンの始祖は、一九七八年にノーベル経済学賞を受賞したハーバード・サイモン教授だ
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