パーソナライゼーションにより関連性を提供する企業としては、グーグルとフェイスブックの二大巨頭が有名だ。グーグルは検索ワードやクリック履歴を、フェイスブックはユーザーが投稿したコンテンツを収集しパーソナライゼーションに活用している。ほかにも、表舞台には出てこないが、行動リターゲティングビジネスを行うアクシオムのような企業が存在する。このような企業は、ユーザーのオンライン上での行動データの、企業間での売買を仲介している。オークションを経てそのデータを購入した企業は、パーソナライズ機能によって消費者個人に関係性の高い品物をプッシュすることができる。そう、あなたの行動が商品として取引されているのだ。
このように関連性を追求した結果、インターネットの巨大企業が生まれ、企業はユーザーのデータを少しでも多く集めようとし、オンライン体験は私たちが築かないうちに関連性に基づいてパーソナライズされつつある。
ニュースは、私たちの世界に対する認識、なにが重要なのかという認識、直面する問題の大きさや特色、性格などの認識を形作る。さらに共通の体験や共通の知識という基礎として民主主義を支えている。現在のジャーナリズムは、歴史的な経緯を経て、その公的な性質から倫理と公的責任が不完全ながらも浸透している。
しかしパーソナライズドフィルターを通じて得られた情報にはこうした倫理や公的責任が織り込まれていない。例えば、アフガニスタン情勢についてかかれた記事より、アップルの新製品の記事の方が優先されてしまったりするからだ。パーソナライズドフィルターの大半は、クリックの少ないものをふるい落とすだけで、重要なものを優先する仕組みが用意されていないのである。
パーソラナイズドフィルターは、人間の認知にも大きな影響を及ぼす。パーソナライズドフィルターによって、私たちは、知っている(かつ賛同している)アイデアに囲まれてしまう(こうした自分だけの情報宇宙を、著者は「フィルターバブル」と呼ぶ)。これにより、私たちはすでに持つ観念的な枠組み(スキーマ)が絶対的に正しいと信じてしまうのだ。
私たちがとらえている世界に合った情報は簡単に吸収できるし楽しい。一方、新しい考え方をしなければならなかったり仮説を見直さなければならなかったりする情報は、処理が苦痛だし難しい。パーソナライズドフィルターは、すでに持っている概念と衝突するコンテンツより、そのような概念に沿ったコンテンツを優遇してしまう。またフィルターバブルは、なにがどうなっているのかよくわからず、新しい考え方を理解し、身につける気になる不安定な状況が生まれないようにしてしまうのである。
さらに、フィルターバブルは次の三つの理由で創造性やイノベーションを阻害する。
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