日本リカバリー協会が就労者10万人を対象に行った調査では、日本人の約8割が疲労を抱えていることがわかった。なお、25年ほど前に厚生省が調査をしたときは、「疲れている」と答えたのは就労者の約6割にとどまっていた。およそ25年で疲れた日本人が大幅に増えていることがわかる。
また2004年から厚生省疲労調査研究班が行った調査では、慢性疲労症候群(生活に支障をきたすような疲労が6カ月以上続く状態)の人々がもたらす経済損失は、約1兆2000億円に上っている(医療費除く)。このような巨額の経済損失が生じるのは、疲れているのに無理をして働き続けることで、本来のパフォーマンスを発揮できず、生産性が下がるからだ。
OECDの調査によると、日本人の睡眠時間はOECD加盟国の中で最下位である。一方、日本人の労働時間は年間で1607時間と、意外なことに世界の平均である1752時間よりやや少ない。
またある調査では、「プライベートな時間が増えたら何をしたいですか?」という質問に対し、日本人の回答の第1位は「休息・睡眠」である。一方で、世界的に見ても睡眠時間が短く、労働時間が長い韓国の人たちに同じ質問をすると、回答の第1位は「運動・スポーツ」で、「友人・恋人などと過ごす」「家族と過ごす」などが上位に入っていた。おそらく韓国人は、運動やスポーツをしたり、家族や友人や恋人と過ごしたりすることが休養になると考えているのではないだろうか。
意外と労働時間が短いのに、8割の日本人が疲れているのはなぜか。その原因として著者が考えるのは、「日本人は、休みの日数が多いわりに、ちゃんと休めていないのではないか」「休養の取り方がうまくいっていないのではないか」ということだ。
肉体労働が多かった時代には、一日じゅう体を酷使して疲れるため、夜はしっかり眠れていただろう。一方、頭脳労働が中心の現代においては、仕事が終わってからも興奮・緊張状態が長く続き、日常生活のリズムが狂ってしまいがちである。これが現代人を疲れさせているのだ。
しかも、コロナ禍以降、オンラインでミーティングができるようになり、スケジュールがみっちり詰まるようになった。単純に仕事量が増えただけでなく、移動中に音楽を聴くなど、気分転換をする時間がなくなってしまったのも大きな問題だ。
日本では、休養とは「何もしないこと」「寝ること」だと捉えられがちだ。だが現代においては、単に体を休めたり眠ったりするだけでは、疲れがうまくとれないのである。
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