相手の気持ちを考えて行動するのは、思いやりがある優しい行為だ。しかし、そのために時間をムダにしたり、自己嫌悪に陥ったりしてしまうこともある。
ある女性は、求職活動中の男性に親切心から仕事を紹介した。ところが、その男性は就職すると給料に対する不満を口にし、その会社の悪口を言うようになった。女性はそんな男性に対し、悔しさと怒りを感じているという。
実はこの女性は、相手に親切にした結果、裏切られるという経験を何度も繰り返している。
一見、相手に問題があるように思えるが、実は問題は自分の側にある。求めることをして“あげる”ことにより相手が「モンスター化」し、自分が振り回されてしまうのだ。
低姿勢になるほど相手はつけあがり、わがままになっていく。要求はエスカレートし、いつのまにか親切にした人を加害者扱いすることもある。相手の気持ちを優先した結果、相手に振り回されてしまうという現象が起こるのだ。
相手の気持ちが優先になっていると、本当の自分の気持ちがわからなくなる。そうなると常に相手の気持ちを考えて、嫌われないように努力し続けるようになってしまう。しかし、人間は本来「成功したら自分のおかげ、失敗したら相手のせい」と考えるものだ。
せっかく努力したのに感謝されないから「自分のどこが悪かったのか?」と自己反省をし、不安になる。やがてその不安は、感謝がないことに対する怒りや恨みに変わっていく。
ところが「もう親切にするもんか!」と決心しても、再び親切にされるとそれを真に受けて、「いい人なのかもしれない」と考えてしまう。しかし、再び相手が不機嫌になると「何か悪いことをしてしまったのかも」と悩み、相手の感情に振り回されてしまう。
相手の言葉を真に受ける傾向がある人は、相手の感情に振り回され、一喜一憂させられる。やがて相手のことが頭から離れなくなり、「自分」という存在を見失ってしまうのだ。
これらは性格や言動の問題ではなく、「脳のネットワーク」の問題である。
脳の「ミラーニューロン」という神経細胞は、他人の動作を見ると、自動的に脳の中で相手のまねをすることがわかっている。緊張している人のそばにいるだけで緊張がうつってしまうのは、この働きによるものだ。
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