心配、モヤモヤ、嫉妬、焦り、苦しさ、失望、孤独感。こうした「ネガティブな感情=悪いもの」だと思われがちだ。しかし、著者はカウンセラーの立場から、それは大きな誤解だと指摘する。ネガティブな感情は決して悪いものではない。
例えば「明日のプレゼンは絶対に失敗できない」という不安は、入念な準備につながる。悠長に構えて何の準備もしない方が、悲惨な結果を招くかもしれない。ネガティブ感情は健全な成長を促す「原動力」にもなる。だから、なくしたいと考える必要はない。
周囲の期待に応えて成果を挙げていた新入社員が、途中で心がポキッと折れて休みがちになるというケースがよくある。これが起きやすいのは「いつでもポジティブな人」だ。原因は、ネガティブな感情に気づけないほど心のセンサーが鈍感になっているか、自分の気持ちにふたをしていること。ポジティブとネガティブの両方がある現実を受け止められる人の方が、幸せを感じやすいものなのだ。
心にネガティブな感情が生まれたとき、「こんな気持ちではダメだ……」とその感情を否定する人が多い。しかし、心理学には人の感情に「良し悪し」は存在しないという考え方がある。
ポジティブ感情も、ネガティブ感情も、湧き上がってくるのは自然なことで、抑えられなくて当然だ。それを自分で否定する必要も、人から否定される不安を感じる必要もない。
ネガティブ感情の「置き場所」を変えるには、自分の感情というものを事実として認識した上で、良し悪しを判断せずに「受け止める」ことが大切だ。湧き上がってくる感情に対して「悪いこと」「良いこと」と区別するのはやめよう。悪い感情は感じないようにしようとし続けていると、自分の気持ちが自分でもよくわからなくなってきてしまう。どんな感情でも、ありのままを受け止めるようにしていこう。
不安なことが1つ起きると、ネガティブなストーリーが頭の中で次から次へと展開し、不安が雪だるまのように膨らんでいくことがある。不安を大きくしていくのは、自分自身の果てしない想像力だ。だが、シンシナティ大学の研究によると、不安に思ったことの約9割は現実には起こらないし、問題が起きたとしても解決できるレベルだったという報告がある。
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