イキイキと仕事をするためには、どうしたらよいのだろうか。それは働くことに意味を見出すことである。しかし、経費節減や効率化の論調が強まるなか、数値目標の達成にひたすら追い立てられ、仕事に意味を感じられていない人も少なくないはずだ。何のためにこんな毎日を繰り返しているのか、これからも続くのか。ふと立ち止まり自分の生活を振り返って、無意味感に苛まれることもあるだろう。
一方で、「虚しさを感じる暇はない」と言う人もいる。こうした人の中には、仕事に無理してのめり込み、忙しくすることで、働く意味と向き合うことを避けているだけの人もいる。そう考えると、無意味感に苛まれている方がむしろ健全なのかもしれない。
なぜ、仕事や生活に意味が重要なのか。精神科医フランクルは、現代人の多くは実存的欲求不満に苦しんでおり、意味への欲求不満に陥っていると主張した。そして、「意味への意志」という概念を打ち出した。そもそも、人間は意味を求める存在だというのである。フランクルは、人間には自分の生活をできるかぎり意味で満たしたいという欲求があると考えていた。そこで重要な役割を果たすのが「社会的使命感」だ。
どこの職場でもモチベーションの高い社員と低い社員が混在しているものだが、全員がやる気マックスになるのは難しいにしても、今よりもモチベーションを高めることは可能であるはずだ。鍵は、従業員が自分のしている仕事に意味を感じられるように導くことだ。
松下電器(現パナソニック)創業者松下幸之助は、社会的使命感を意識していた。松下は水道の水のように大量にあるものは、価値があってもただ同然に扱われていることに気づいた。そして、電気器具を大量に生産し、ただ同然の安さで出回らせることに自分の使命があると感じたという。松下は自分の心に生まれた社会的使命感を水道哲学と呼んでいる。
このことから、仕事の意味づけにおいては、利己的なものではなく、社会に貢献する意味づけが重要であることが分かる。金銭報酬や生活の保証もモチベーションにはなりうるが、それには限界がある。誰かの役に立っていると心から感じられることでモチベーションは一気に高まる。
自分たちの仕事がどう人々の役に立っているか、仕事と社会的使命感をつなげて語ることができれば、職場のモチベーションの様相は一変するはずだ。
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